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人間学・古典

第十五話 「怒りを止むるは」

中国哲学に学ぶ 不況は会社守成の好機

※本コラムは2000年代に井原隆一氏が書き下ろした「不況は会社守成の好機」全41話のコラムを再連載するものです。



“怒りを止むるは詩に若くはなく、憂いを去るは楽に若くはなし”(管子)

 即ち、怒りたい気持ちを押えるには詩が最もよく、心配ごとをまぎらすには音楽がよい。


 現職時代約六十年、心の底から怒った記憶がない。思うに、失敗、過失を自分のセイにしてしまっているからだろう。怒りの多くは責任を他に負わせるところから生じているが、自分のセイにしてしまえば振り上げた
拳骨のやり場にも困ることになる。

 中国の諺に“ひとつ怒ればひとつ年取る、ひとつ笑えばひとつ若返る”とある。私は九十五才、これ以上の年をとりたくない。

 それでも年を取ると気が短くなる、カッとなるときがある、そんなとき、自然に自分の口から出てくる詩か歌は、童謡の“夕焼け小焼け”民謡の“佐渡おけさ”、歌曲の“荒城の月”吟詠では“桜花”。

 去年の夕方、順調に育ちつつあった大根に除虫剤をかけるところを除草剤をかけてしまい枯れてしまった大根を見ながら、“お経”の代わりに唐の杜甫作の“春望”を口ずさんでいた。
通りかかった犬を連れた老夫婦から節をつけて吟じてくれと頼まれたが、遠慮してしまったが、去ってから声を張り上げた。

 国破れて山河あり、城春にして草木深し、時に感じては花にも涙を濺ぎ
 別れを恨んでは鳥にも心を驚かす 

以下略

 ※栗山英樹氏から、本コラム井原隆一氏の「人の用い方」書籍と、井原隆一「人の用い方セミナー」収録講演CD版・デジタル版を推薦いただきました!

 監督の仕事は、選手の心を動かし、勝利の高みに導くことです。人をいかに用いて、信頼感を高めるか―――
その答えを求めて、私は井原さんの「人の用い方」のCDを5年間、毎日球場までの往復2時間、車の中で聴き、本をカバンに忍ばせていました。選手は勝利のために厳しい練習をしているわけですから、私は素振りの代わりが勉強だと思っています。

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