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危機を乗り越える知恵(4)揺るぎない信念が開く未来

指導者たる者かくあるべし

 明治6年の政変に敗れた西郷隆盛が戻った薩摩(鹿児島県)は独立国の様相を呈した。
 
 士族への禄の支給は継続され、農地からの地租(税)も中央政府に納入されない。
 
 その薩摩の不平士族が西郷を担いで明治10年2月に決起した。1万6千の武装士族が鹿児島を発って熊本鎮台を襲い、7か月にわたって熊本、宮崎、鹿児島を転戦し政府軍に抵抗した。
 
 最後に西郷は鹿児島の城山で自決して内乱は幕を閉じる。ご存知の西南戦争である。
 
 何ごとにおいても「話せば分かる」式のうやむや解決が得意の日本の近代政治だが、大久保は容赦しなかった。
 
 決起の翌日には征討令を発し、最終的には10万の軍を鎮圧に投入する。主力は徴兵令による平民兵士たちで、最新兵器で武装していた。
 
 武力においても、旧時代(士族)と新時代(徴兵軍)が激突し、旧時代 は敗れ去る。
 
  「西郷は大義のない反乱には加担するまい」との期待を裏切られた大久保の行動は速い。
 
 この危機も、新時代を開くためには障害である士族を取り除くチャンスと捉えた。竹馬の友を切り捨ててでもやる。開化の行方に信念があった。
 
 混乱が収拾された翌年、明治11年5月14日朝、大久保は麹町の自宅を訪れた福島県令の山吉盛典にこう語っている。
 
 「明治元年から10年までは創業期。混乱もあり、何もやれなかったが、事が片付いて維新は、これからだ」
 
 「そして次の10年が一番大事で、内治を整え産業を興す。これは私がやる。さらにその後の10年は、後進たちがうまくやってくれるのを待ちたい」
 
 言い残して大久保は太政官に出仕する馬車に乗る。馬車が紀尾井坂を下ったところで、「西郷の復讐」を唱える石川県の士族ら四人に襲われ斬殺される。
 
 大久保にも、この暗殺だけは見通せなかったか? 
 
 いや、事件の数日前、大久保は側近の前島密に前夜の夢見を語っている。
 
 「西郷と取っ組み合いをして崖から落ちてな、わしの頭蓋が割れたんだ」。
 
 西郷とともに旧時代を葬り去る。命と信念をかけた覚悟の先に、後進たちが次の時代を開くことを信じて。
 
 士族たちの不満は、自由民権運動に振り向けられ、やがて憲法制定、国会開設へとつながり、「この国のかたち」が見えてきた。
 
                   
 ※参考文献
 『大久保利通』毛利俊彦著 中公新書
 『大久保利通』佐々木克監修 講談社学術文庫
 『日本の歴史20 明治維新』井上清著 中公文庫
 『西南戦争』小河原正道著 中公新書
 
 
 
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  著者/宇惠一郎 ueichi@nifty.com 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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