賃金管理研究所は1978年以来、役員報酬の実態調査アンケートを定期的に実施し、調査結果を公表してまいりました。その最新レポート「社長・重役の報酬・賞与・年収額の実態」2012年(第28回)実態調査を5月10日に発表いたしました。
今回の調査対象となる役員報酬が決められた1年前の経済環境を振り返ると、本格的な震災復興への期待が高まる一方、海外経済の減速や欧州債務問題、円高の影響などの景気下押し要因が懸念される状況でした。このような環境下で、役員報酬改定にも慎重な姿勢の会社が多かったものと考えられます。社長報酬を据え置いた会社は61.5%、役員全体の報酬を据え置いた会社も48.7%に達しました。
役員報酬の代表的な指標である社長報酬月額は247.3万円と、ここ数年横ばいでの推移となっています。内訳は上場企業405.2万円、非上場企業182.2万円と、2.22倍の差がありますが、1人で数億円を手にする欧米企業CEOと比較すると日本の上場企業トップの役員報酬もまだまだ低い感じがいたします。
上場企業の社長は、厳しい社内競争を勝ち上がった「選びに選び抜かれた人材」というイメージが強いのに対し、非上場企業には中小企業のオーナー社長やその2世・3世が多く、意思決定と業務執行の最高責任者であるとともに大株主の顔も持っているのがその特徴と言えるでしょう。
役員賞与の支給についても、上場企業と非上場企業ではそのスタンスに違いが見られます。社長賞与を支給した会社は、上場54.5%、非上場22.7%。この比率の差は業績だけで説明がつくものではありません。「株主との利益共有」を基本スタンスとする上場企業は業績連動指向が強いのに対し、非上場企業では賞与相当額も年収額に組み入れて考える会社が多いからです。
(担当責任者 賃金管理研究所 副所長 大槻幸雄)