2015年に入って、外資の中国撤退が加速している。2月5日、シチズンホールディングスの中国での合弁会社「西鉄城精密(シチズンセイミツ)」が中国広東省の工場を閉鎖し、会社を清算して1000人の現地従業員を解雇した。
中国から撤退する日本企業はシチズンだけではない。パナソニック、ダイキン、TDK、ソニーなどが中国での工場撤退を相次いで表明し、日本国内に回帰する動きが活発化している。
一方、アメリカ企業マイクロソフトも北京と広東省東莞にある工場を閉鎖し、ベトナムに移転した。
さらに、1月9日、香港の最大華人財閥李嘉誠氏は突然、彼が率いる長江グループと和記黄埔の合併・再編を発表した。合併後の新会社である長江和記実業と長江実業地産の登記地が香港から英領ケイマン諸島に移転されたことも明らかになった。投資嗅覚が鋭い李嘉誠氏の行動は様々な憶測を呼び起こし、外資の中国撤退を一層加速させる懸念が強まっている。
それではなぜ外資、特に外資系メーカーは中国撤退を加速させているか?
まずは中国製造業の生産過剰が深刻化している。中国は「世界の工場」と言われるが、多くの分野は実際、生産過剰の状態に陥っている。粗鋼を例にすれば、2014年中国の粗鋼生産量は8.2億トンに達し、世界生産(16.3億トン)の半分を占める。しかし、そのキャパシティーの3割弱は過剰している。粗鋼のほか、セメント、電解アルミ、平版ガラスなども2~3割過剰している。競争が激化する中国市場では、採算が取れない外資系メーカーにとって、撤退はやむを得ぬ選択である。
第二は人民元高によるコストの上昇である。2005年中国の為替制度の改革が実施後、2013年まで人民元対米ドルレートは約25%上昇した。日本円に対する元高はさらに際立つ。人民元対円レートは2011年末時点の約12円/1元から2014年末時点の約20円/1元へと4割も急上昇した。元高は日系メーカーを圧迫する重要な要素となっている。
三番目の理由は中国の人件費の急上昇である。過去5年間、中国の人件費は2倍以上あがっており、シンガポールを除くASEAN諸国やインドよりかなり高くなっている。2015年1月時点で、上海の最低賃金は月額296ドルで、マレーシア259ドル、インドネシア245ドル、フィリピン229ドル、タイ200ドル、ベトナム137ドル、インド127ドルに比べれば、中国の人件費の高さが目立つ。
人民元高や人件費アップによる生産コストの急ピッチな上昇によって、外資にとって、中国現地生産のメリットが薄くなっている。中国から相対的に生産コストが安いASEAN諸国やインドへの外資シフトは今、加速している。
中国商務省は、外資の中国撤退につき、「局部的な現象で外資の大規模な撤退はまだ起きていない」とコメントし、表では問題視してないようだ。しかし、前に述べた、中国から撤退した外資の多くは多国籍企業であり、資金のみならず販路も海外にシフトしている。中国は企業倒産と失業問題の二重打撃を受ける恐れがある。中国政府は早急に対応策を講じなければ、予期せぬ問題が起きる可能性が無いわけではない。