ヒト・モノ・カネ…限られた経営資源を上手く活用しながら、会社の利益を向上させていくことが、社長の役割。そのためには自社の現状を見つめ直し、経営を効率化する「業務改善」が欠かせない。しかし、「実際には何をすればよいのかわからない」と、実行したくても足踏みしてしまう現状がある。その問題を解決すべく、10年間で総額1兆円の事業改善に乗り出し、コスト縮減総額2000億円を実現した横田尚哉氏が「利益を最大化する業務改善」の順序を公開する。
まず、リソースの余裕を作る
会社を車のように考えてみてください。車体は組織、車道は事業、運転手は経営者です。事業は、シーン毎に状況が変化します。上り坂のときもあれば、下り坂のときもあります。直線もあれば、急カーブもあるのです。その状況に合わせて、組織をコントロールするのが経営者です。
私は、経営コンサルタントとして、いくつかの会社を見てきました。こういうときはどうすればよいのか、次は何をするべきか、と言ったアドバイスをしてきました。それは、つまり、今の状態と次の展開を予測する「ナビゲーション」であり、会社を上手に運転していくための「ドライビング・テクニック」なのです。
もし、あなたが今、経営の改善が必要だと感じているのなら、まず最初にしていただきたいことがあります。それは、《リソースの余裕を作る》コトです。私は、経営者から相談を受けたとき、最初にこれを行うことを考えます。リソースの余裕とは、全ての資源のうち、どこにも配分されていない資源、具体的には時間と予算です。
なぜ、時間と予算かというと、答えは単純です。大抵の会社は、時間的にも予算的にも余裕がなく、カツカツだからです。なぜなら、リソースの効率を考えれば、誰しもギリギリまで使おうとするからです。車で言えば、直線道路をまっすぐ突っ走ってきた状態です。時間と燃料の効率ばかり追求した結果、余裕がまったくない状態です。
2つのステップで改善する
では、リソースの余裕を作るために、何をすれば良いかをお伝えします。それには、2つのステップで考えてください。1つ目のステップは、いまの作業や材料、器具や人員に対して、「それは誰のためか?」「それは何のためか?」と問いかけることです。
問いかけたとき、素直に答えが出せるかどうかです。もし、答えがすぐに出なければ、それに掛けているリソースは必要ないかもしれません。たった2つの質問で、改善余地が見つけやすくなるのです。仮に、答えが出たとしても、その答えに違和感を感じたり、人によって異なる答えだったりしていたら、同じ様に、改善できる可能性が高いのです。
ある会社での話です。そこで、ある書類を見つけました。私は、「この書類は何のためですか?」と問いかけると、スッキリとした答えが返ってきませんでした。これは改善できるかもしれないと思い、詳しく調べていきました。
その結果、昔の手順がただ残っていただけでした。その書類に関わる、手間や時間は何の役にも立っていなかったということです。いままで、誰一人疑問に思わなかったのが不思議なくらいです。すぐに、その書類をなくしてもらい、リソースの余裕を作ることができました。
このように、「誰のため?何のため?」と問いかけるだけで、誰でも簡単に改善余地を確認できます。経営者はもちろんのこと、従業員みんなが、自分のしている仕事に、この問いかけをしてみることです。一気に、改善候補が見つかるはずです。
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