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ビジネス見聞録

「展示会の見せ方・次の見どころ」(2025年12月)

ビジネス見聞録 経営ニュース

展示会にはセルフイメージを変えて臨む


 展示会営業(R)コンサルタントの清永健一です。

 突然ですが質問です。

 前回前々回のコラムをお読みいただき、

「このようなやり方を社内で徹底させるのはどうすればよいのでしょうか?これまでとはかなりちがうアプローチなので不安です。」

というご質問を複数いただきました。

 もしかすると、あなたもそう思ったかもしれません、その通りなのです。前回、前々回お伝えした「売り込むのではなく、役に立つ情報を提供する」というやり方には、これまで一生懸命に営業をしてきた人ほど違和感を持ちがちな方法なのです。

 無理もありません。だって、人口が増加していて、需要が供給を上回っていた時代は、お客立ち情報を提供することなんて非効率でムダなことだったのですから。目の前にすでにあなたの商材を欲しい人がいるのですから、いかにわかりやすく手短に自社の商材の良さを伝えるかということが最重要です。

 そして、買ってもらったら、さっさと次の商材の話に移るか、次の欲しい人のところに行くというのが、優秀な営業マンだったのです。

 ですが、あなたもご存じの通り、そんな時代は、とっくに終わっています。売り手側が買い手のニーズを掘り起こすことこそが重要になった現在では、一旦自社商材から離れて、買い手の悩みに寄り添い、役に立つ情報を提供することが重要なのです。

 このアプローチは、展示会に出展する、しないに関わらず、すべての企業にとって必要なことです。にもかかわらず、多くの企業が、この方向転換をスムーズにできずにいます。頭ではわかっていても、心がついていかないのです。

 では、どうすればよいのでしょうか?実は、この「売り込むのではなく、役に立つ情報を提供する」というマインドチェンジをスムーズに行う方法があります。それは、展示会出展をきっかけに、出展コンセプトにもとづく「肩書」を新たにつくることです。

「肩書?部長とか課長とか主任とかそういうやつのこと?」

 そう思ったかもしれませんね。でも、ここで言う肩書は、そういう役職をあらわすものではありません。ここで言う肩書とは、自分が何屋さんなのか?を端的に示す言葉のことです。

「何屋さんなのか?」を端的に示す言葉、といっても、ネジ製造業、システム販売業、花屋、清掃業などのように、単に業種をあらわすものになってしまってはいけません。そうではなくて、『だれに、どのように、役に立つのか』が伝わるようにする必要があります。 たとえば、前述のオーアンドケーの場合も、肩書を、単に「清掃業」とはしませんでした。オーアンドケーは、プロジェクトメンバーで議論した結果、「介護施設うるおいサポーター」という肩書にしたのです。介護施設に対して、ノロウィルスやインフルエンザの発生を防ぎ、安心・安全・快適な環境を提供する、という出展コンセプトを体現するわかりやすい言葉として、自分たちを「介護施設うるおいサポーター」と名付けたのです、

 そうすると、あるおもしろい変化が起こります。「介護施設うるおいサポーター」という肩書をつけるということは、「介護施設うるおいサポーター」と自ら名乗ったり、呼ばれたりすることになります。最初は、名乗った時に照れくさかったり、呼ばれ方に違和感を感じたりするでしょうね。

 それに「介護施設うるおいサポーター」ですから、掃除のことだけ話をしているわけにはいきません。時にはわからないことを聞かれて焦ることもあるでしょう。でも、そういったことを繰り返すうちに少しずつ慣れてきます。そして、だんだん、この「介護施設うるおいサポーター」という響きが、自分をあらわす言葉としてしっくりくるようになるのです。そうなればしめたものです「介護施設うるおいサポーター」としてふさわしい

・手洗いのポイント

・うがいのコツ

・消毒をする時の注意点

・注意喚起のポスターに記載する内容

などの情報提供を自ら進んでしているはずです。

 もしかしたら、情報提供の内容は、このような自社商材である清掃に関連する内容だけにとどまらないかもしれません。『うるおい』という言葉から派生して、介護施設の人間関係にうるおいをもたらす挨拶の仕方とか、入居している高齢者の生活がうるおうお花や絵画の配置の仕方などにまで踏み込んで情報提供する人が出てくるかもしれません。

 自らの肩書を「介護施設うるおいサポーター」とすることによって、自分自身のセルフイメージが高まっていくのです。

 では、肩書はどのようにして作ればよいのでしょうか?せっかくですから実効性のある肩書をつくりたいですね。そのためのポイントは3つです。

 ひとつ目のポイントは文字数です。文字数が長すぎてはいけません。13文字以内を目安にしてください。わたしたち人間の目と脳は、13文字までなら読むという感覚でなく見るだけで意味を判別できると言われています。だからでしょうね。あの有名なヤフーニュースの見出しも13文字(成果には13.5文字)です。あなたも13文字以内の肩書をつくりましょう。

 ふたつ目のポイントは、「専門領域 (+メリット)+一般名称」で考えるということです。「+メリット」がカッコ付きになっているのは、メリットを加えることよりも、文字数を13文字にすることの方が優先だからです。肩書におけるメリットは文字数が13文字に収まる場合のみ追加しましょう。

 専門領域は、出展コンセプトを一言で集約した言葉にします。「展示会で出会いたい相手」の業種や業界名をそのまま記載してもよいかもしれません。オーアンドケーの場合は、この部分が「介護施設」になりました。そして、一般名称は、アドバイザー、サポーター、パートナー、コンサルタント、コーチ、コンシェルジュなどのように専門家をイメージさせる言葉にするとよいでしょう。オーアンドケーの場合は、「サポーター」になりました。

 この専門領域 + 一般名称 をつなげた言葉が、文字数13文字に対して余裕がある場合はさらにメリットを加えるとよいでしょう。オーアンドケーの場合は、「専門領域 + 一般名称」 =「介護施設サポーター」とすると9文字になり、まだ6文字余裕があったので、相手方に提供できるメリットを追記することにしました。

 メリットは、20年ビジョンの「介護施設の入所者さんやヘルパーさんたちがイキイキと暮らすことをサポートする」を踏まえて「うるおい」としました。そして、「介護施設うるおいサポーター」という肩書が決まったのです。 最後のポイントは、検証をすることです。ポイント1、ポイント2を踏まえて考えたた肩書はまだ仮説でしかありません。この肩書が本当に有効なものなのかどうかを検証しましょう。

 検証には自社視点での検証と顧客目線での検証の2つがあります。まずは、自社視点での検証をしましょう。つくった肩書が、セルフイメージを高め、提供する情報の幅を広げるようなものになっているか?を検証します。

 それをクリアしたら、次に、顧客目線での検証をします。肩書を顧客が聞いた時に、「おっ!うちにとって役に立ちそうだぞ」とか「あっ!なんかもっと詳しく話を聞いてみたい」と思うようなものになっているか?を検証していきましょう。

 ところで、あなたは、石を積む職人の寓話をご存知でしょうか?ドラッガーがマネジメントで取り上げているのでご存知の方も多いかもしれませんね。こんなお話です。

旅人が、ある村で建設現場に通りかかりました。

旅人はそこにいた職人に、「何をしているのですか?」と聞きました。

するとある職人は、「この仕事で生計を立てているんだよ。食べていくためさ。」と答えました。

二人目の職人は、「見れば分かるだろう。石を積んでいるんだ。上手く積むためには技術がいるのさ」と返答しました。

旅人は、三人目の職人にも同じように質問しました。

するとその職人は、「わたしは素晴らしい教会を作っているのです。この場所は多くの人の心の安らぎになるのです。」と答えたのです。

 この寓話は示唆に富んでいます。石を積むという同じ行為でも、自分を何者と捉えるかによって、その意味付けが大きく変わってきます。自分を、生活のために仕方なく石を積んでいる人間だと考えると、それ以上の発展は全くありません。自分を、石を積むプロフェッショナルと考えると、石を積む技術についての研鑽が進むでしょう。これはこれで立派なことだと思いますが、さらにもう一歩踏み込みたいのです。

 自分を、教会を作るために石を積んでいる人だ、と捉えると、皆が集う教会の土台になるのにふさわしい石の積み方はどのようなものだろう?と考えるでしょうね。さらには、心に安らぎをもたらす建築設計とはどういうものだろうか、と言うことにまで思いを馳せるかもしれません。

 わたしたちの仕事も同じなのです。自分を何者ととらえるかによって、わたしたちの思考や行動は大きく変わります。しかし、それはセルフイメージを変えることですから、簡単ではありません。だからこそ、肩書として設定し、名刺にも記載し、日々名乗ったり、呼ばれたりすることで、じわじわと浸透させていくことが重要なのです。あなたの会社もぜひ、展示会出展をよいきっかけとして、セルフイメージを変える肩書を作ってほしいと思います。

 

◎2025年12月中旬から1月のおすすめ展示会

※展示会・イベントの日程は変更することがあります。公式サイトから確認をお願いします。

清永 健一(きよなが けんいち)
株式会社展示会営業マーケティング 代表取締役
展示会営業Ⓡコンサルタント。中小企業診断士。奈良生まれ、東京在住。神戸大学経営学部卒業後、メガバンク系コンサルティング会社など複数の企業で手腕を発揮し、2015年に独立、株式会社展示会営業マーケティングを創業する。「展示会は売上アップへの投資効率に最も優れた手法」と主唱。支援先企業からは、集客・受注・売上が大幅に増加したと好評の声が多数あがる。著書の「飛び込みなしで新規顧客がドンドン押し寄せる展示会営業術」「中小企業のDX営業マニュアル~オンライン展示会をきっかけとした営業改革術」(ともにごま書房新社)、「仕事のゲーム化でやる気モードに変える」、「営業のゲーム化で業績を上げる」(ともに実務教育出版)はいずれもamazon部門1位を獲得。行政、公益法人、金融機関、各地の商工会議所など講演実績多数。 ホームページ:https://tenjikaieigyo.com/

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