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採用・法律

第157回 弁護士への人事労務相談のタイミングとやり方を変えよう

中小企業の新たな法律リスク

弁護士への人事労務相談のタイミングとやり方を変えよう

お困りごとがあれば、たとえどんなに追い詰められた状況であっても、まずはご相談ください。何かできることはあるはずです。しかし、せっかく弁護士が身近にいながら、相談のタイミングとやり方についての固定観念にしばられて、うまく活かせていない企業が多いと思います。とりわけ人事労務の案件においては、その点が大きな違いを生みます。

 

富澤社長: 賛多先生、今日は取引先との裁判の件で打合せをしていただき、ありがとうございました。

 

賛多弁護士: こちらこそ、社長にわざわざご足労をいただき、ありがとうございます。お打ち合せのとおり裁判の準備は進めましょう。さて、何か他にご相談をされたい案件はございますか。

 

富澤社長: 今のところ、弁護士の先生からアドバイスをいただくべき事件はないだろうと思います。

 

賛多弁護士: そうですか。お困りごとが無いのは何よりですが、せっかくお見えになられたのですから、気になっておられることがあれば、うかがいますよ。

 

富澤社長: 困っていることが無いわけではありません。実は、自己主張が強くて、対応に困っている社員がいるのですが、まあ何とか自分たちで対処しています。万一こじれてしまって、先方に弁護士がついたり、裁判になりそうになったら、その節には代理人になっていただけるよう、宜しくお願いします。

 

賛多弁護士: 確かに、そういう段階になったら、弁護士が前に出るしかありませんね。ただ、それは、もったいない弁護士の使い方だと思います。

 

富澤社長: そうなんですか。その社員は、勝手な仕事のやり方をして、上司の指導をなかなか受け入れず、それどころか、今の上司はマネジメントができなていから上司を変えてくれなどと、わがままばかり言っているのです。このまま、いくら注意しても態度が改まらず、もう辞めてもらうしかないということになったら、解雇して大丈夫か、退職勧奨はどうやるか等、法的な問題について、いよいよ賛多先生にご相談するタイミングだと思っていました。

 

賛多弁護士: そのように思い込んでおられる経営者の方は少なくありませんね。しかし、社員との人事労務のトラブルは、そのような最終段階でご相談をいただいても、できることは非常に限られてしまいますから、その後の展開について、必ずしもご満足はいただけないでしょう。その頃には、その社員も、会社への不満や反発をもっと強めているはずですから、直接の対話による解決はさらに難しくなります。

 

富澤社長: 以前の顧問弁護士からは、解雇するにも証拠が積み上がっていないといけないと助言されましたので、その社員とやりとりしているメール等の記録はきちんと残しています。

 

賛多弁護士: 確かにそれは重要なことです。ただ、そのようなメール等のやりとりは、裁判所や労働局、労働組合等、第三者が読んだときに、会社の皆さんの困難や努力について理解してもらえるものになっているでしょうか。同様のご相談は非常に多いですが、そのような社内のメール等のやりとりを後から拝見すると、何をおっしゃりたかったのか、そもそも何に対立していたのか等、社外の人には理解が難しいものであることがあるのです。

 

富澤社長: そういった当事者間のコミュニケーションについても、弁護士の先生方に相談するべきなんでしょうか。

 

賛多弁護士: 私どもは、その段階から少しでも早くご相談いただくことをお勧めしています。早い段階から日常的なやりとりについて支援させていただいたことによって、皆さんが想定もしていなかった、迅速な解決に至ったことは少なくありません。

 

富澤社長: それは、どうしてなのでしょうか。

 

賛多弁護士: まず、社外の私たちが、会社の業務や相手の社員の課題、皆さんの認識をよく伺い、それを部外者にも分かりやすい“プレーンな表現”で、つまり、余計な飾りがなく、シンプルで直接的、あるいは具体的で明確な表現で言語化するお手伝いをすることが、相手の社員において、客観的な状況や皆さんの意図への理解を促進するからかもしれません。

また、皆さんにおいても、相手の社員の言動や態度を私たちと一緒に分析することによって、相手の社員が何に困っているのか、何を欲しているのか等、それまで汲み取ることが難しかった相手の事情や心情に思いを致せるようになることで、より効果的なメッセージを相手に伝えることができるからかもしれません。

 

富澤社長: おもしろいですねえ。まるで占い師や魔術師のようです。

 

賛多弁護士: 実は、弁護士は、そういう「対話」のスキルを養う訓練の機会に恵まれているのですよ。それが、裁判を戦うということですから。

 

宮澤社長: それは、どういうことでしょうか。

 

賛多弁護士: 比喩的な表現をすれば、弁護士は裁判所で、自分の依頼者と一体になってその思いを代弁することは勿論ですが、ときには、相手方の身体の中に“憑依”して、相手方の中からこの世界を見てみる、それから、自分の身体から“幽体離脱”して双方の対立状況を裁判官のように上から俯瞰してみる、という思考作業をしなければなりません。それを当事者間の直接の「対話」を支援するために応用しているのです。

 

宮澤社長: なるほど。確かにそのように「対話」をサポートしてくだされば、起きなくてもよいトラブルは防ぐことができ、得るもののない裁判にも巻き込まれないで済みそうですね。

 

賛多弁護士: 手間はかかるかもしれませんが、皆さん自身の「対話」の技量も上達しますから、その価値は十分にあるかと思います。

 

宮澤社長: 今悩んでいる件についても、本格的なサポートをお願いすることにします。

 

賛多弁護士: 喜んでお手伝いさせていただきます。

****************************************

当職(小島健一)が、長年、企業の人事の皆さんが課題のある社員に対応するのを支援してきた、最近“二人羽織”と名づけたこの支援方法は、相手の社員には自分の姿を見せず、人事など会社の背後から社員との「対話」に介入し、合理的な解決を導くというものです。

 

この「対話」の“秘訣”をまとめると、以下のようになります。

ⓐ より深く、より高い視点で

= 相手方への“憑依”(なりきり)と自分からの“幽体離脱”(メタ認知)

ⓑ 公正さを貫き

= ゆるがない「事実」を確認し、人によって異なる「認識」を言語化する

ⓒ 期待を示し続ける

= 決して、見捨てない

当事者それぞれの物語(ストーリー)が立ち上がり、高揚感(わくわく)が沸き上がるようにすることも意識します。

 

期せずして、目の前の人事の方だけではなく、その向こうの相手の社員に対しても、カウンセリングとコーチングをしているようなものだとお感じになるかと思います。

 

〈参考〉

拙稿「連載“発達する”人事 ~ 発達障害の傾向のある人の雇用にかかわる留意点と実務  第5回 合理的配慮」(「労務事情」(産労総合研究所)2020年8月1・15日 No.1409) https://www.torikai.gr.jp/articles/detail/post-25865/

執筆:鳥飼総合法律事務所 弁護士 小島健一

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