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人事・労務

第36回 年末賞与の支給動向

賃金決定の定石

まもなく12月の年末賞与の支給時期を迎えます

賞与の本質は“利益の分配”にありますから、多くの企業では自社業績に基づいてその支給総額が決定され、個別配分においては社員の勤務成績に応じて決定されるものとされています。

 

賞与決定の動向に直結する直近の企業業績を見てみると、法人企業統計調査(2023年4~6月期)では、経常利益が前年同期比11.6%増と過去最高を記録、企業規模別では、大企業が同9.7%増、中堅企業が同7.6%増だったのに対し、中小企業は同23.5%増と大幅な改善を示しました。

 

ただし、業種によって経営環境は大きく異なります。自動車関連のように半導体不足の解消によって生産が回復基調にある業種もあれば、輸出が好調であったはん用機械や生産用機械など、中国をはじめとする海外経済の停滞によって先行きの業績の悪化が懸念される業種もあります。

 

一般に中小企業の賞与支給は、直前の経済状況に大きな影響を受ける傾向にありますが、今冬については景気よりも人手不足への対応、換言すれば、人材の定着を意識した賞与支給となりそうです。2023年夏季賞与について東京都や大阪府の中小企業の妥結状況や各地域の諸団体や金融機関が公開している夏季賞与の支給実績を確認すると、支給額が前年実績を上回っただけでなく、賞与を支給する企業の割合も前年より増えてきているのです。

 

その理由としては、「従業員の意欲向上」や「人手不足の解消」などの人材確保・定着を図ろうとするもの、「物価の高騰」を踏まえた賞与増額による対応が考えられます。

 

今年の春季労使交渉における賃上げは高水準となりましたが、中小企業の賃上げに占めるベア分は平均1.5~1.6%程度です。物価上昇分をベア分でカバーできなかった企業も多いこともあって、実質賃金は9月まで18カ月連続で前年同月比マイナスを記録していますから、従業員に対する生活支援を目的として賞与原資を上積みするなどの動きはこの年末賞与でも広がるのではないでしょうか。

 

従業員に対する生活支援策として賞与支給を位置付ける会社や、人手不足への対応、すなわち人材定着を目的として賞与支給額を検討する会社も増えています。年末賞与については、雇用の維持・安定や社員のエンゲージメント向上に繋げられるよう、自社の業績はもちろんのこと、今春および来春の賃上げ(ベア)の対応なども視野に入れ、総合的な観点からその支給判断を行う必要があると言えましょう。

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