人手不足が顕在化する製造業界
製造業界は94%以上の企業で人手不足が顕在化しています。その中でも32%は「ビジネスにも影響が出ている」と回答しています。人材採用に課題のかる企業は、「技能人材の不足」が突出しています。中小企業ほど「技能人材」の確保に苦労しているのが現状です。(2018年12月 経済産業省製造業調査より)
私は、有望な人材が町工場に来ないのではなく、能力のある有望な人材が来るような会社づくりをしていないことに大きな原因があると考えています。
これから紹介する株式会社永田製作所の取り組みは、小さな町工場の参考になる良い事例です。
株式会社永田製作所は、鉄の丸棒を切削する金属加工業を営み、古くからミシンやATM機、コピー機の部品を製造加工している下請け町工場です。創業当時は高度成長期で、1964年の東京オリンピックに始まり、営業しなくても仕事がやって来た時代でした。しかりバブル崩壊で市場は一気に縮小しました。更にリーマンショックの影響で製造業には不況の嵐が直撃し、永田製作所も例外ではありませんでした。
景気がどん底で経営存続の危機にさらされていた永田製作所が見事に業績を回復した取り組みは、下記の第二話、第三話をご覧ください。
第二話 下請け製造業で価格競争から脱却する方法
https://plus.jmca.jp/motoshi_ichi/ichi2.html
第三話 下請け町工場の新販路開拓のやり方
https://plus.jmca.jp/motoshi_ichi/ichi3.html
課題は人材の確保
世界のトップクラスの企業から直接注文を受けるほどになった永田製作所は、過去最高の売上と利益を更新し、事業は成長軌道に乗りました。
そうなると、次の課題は「人材」です。 工場は? 猫の手も借りたいほどに大忙しです。 設備投資にも積極的に取り組みました。 近隣の工場仮。 最新のマシンを導入して無人でも稼働できる工場も作りました。 それでも人材が足りません。 ハローワークや求人情報雑誌など人材を獲得するためにやれるだけのことはやったけれど、どうもうまくいきませんでした。 そこで人材採用も戦略的に取り組むことにしました。
- 来て欲しい理想の人材
- 来て欲しい。人材の能力
- 来て欲しい人材のエリア
とランチェスター法則の三つの特定分野を人材採用に置き換えて来て欲しい。人材と採用基準を明確にしました。
- 現在の職場でやりがいがなく、将来に不安を感じている人。
- 仕事に誇りを持って働きたいと思っている人。
- 永田製作所の取組に共感してくれる人。
- 誕生日会や釣り大会忘年会や社内イベントに積極的に参加してくれる人。
- 地域は自転車で通勤できる範囲の方。
そして過去の経験能力チラシで人材採用を行うことにしました。
近隣8000世帯にポスティングをしました。
人材募集チラシで打ち出したのは将来性です。
全国の中小企業から注目された工場見学が絶えないことや、金融機関から注目されていることに加え、専門性や技術力の高さです。地元で働きたいと考えているエンジニアに事業の取り組みを認知してもらうことができれば、選んでもらえる可能性は、高い勝算はあると判断しました。
近隣8000枚のチラシはポスティングを3回行いました。 その結果、7名の応募があり、大卒エンジニアを1名採用することができました。大卒エンジニアの方は、なんと本当に近所で、会社に自転車で通勤しています。
会社の目的は人を幸せにすることです。経営者は働く人やその家族や関係する方々、地域も含め、みなをより良くするため、経営力を養わなければなりません。物心両面でのより豊かさを得るために人を働いているのです。
そのため、経営の目的はお客様を作ることとなります。つまり、永田製作所の取組は中小企業本来のビジネスを成功へ導くことであって、人材を採用することが目的ではありません。
無名の小さな会社が人材採用に成功するためには、ランチェスター差別化戦略で利益性の高い経営基盤を作ることが何より最優先です。あなたの仕事は、働く人たちのために将来が可能性に満ちた職場を作ることなのです。