今回は、ザンビアで見つけたすばらしいプロジェクトについてご報告いたします。そのプロジェクトは「パビディア/PaViDIA」という名前です。
●ザンビアで見た夕日、空気も澄んでいるため、ものすごく美しい景色でした。
「パビディア/PaViDIA」は“Participatory Village Development in Isolated Areas”の頭文字をとったもので、「孤立地域参加型村落開発プロジェクト」というものです。
このプロジェクトのどこがすばらしいかというと、現地の方々が持っている隠れた能力をフルに発揮してもらい、将来に向かって自分達で進歩向上できるような仕組みを持っているからです。私はこれは、カイゼンそのものであると感じました。
●パビディアプロジェクトの場所に貼ってあった計画表。
左下に“KAIZEN”の文字が見えます。
具体的な内容ですが、例えばひとつの集落に100人の人が住んでいるとすると、この村には全部で1万ドルを支給します。
この金額は村人全員に対して一人当たり100ドルに当たる金額となります。しかし、この支給はただの一回だけと決まっています。
すなわち、ただ何も考えないでパーッと使ってしまったらそれでお終いというわけで、みんなでどういう使い方をするのが将来に対して一番いいかを考えてもらうということです。
もちろん、この考える方法も教えてあげる必要があるわけですが、日本から来ているトレーナー役の方がしっかりとフォローをしておられるのです。
これまでの一般的な開発途上国支援では、その地域で必要なモノを先進国が作ってあげるといったこと(いわゆる箱物中心の寄贈)が多かったそうですが、それだとせっかく良いと思ってモノを作っても、現地のレベルに合わないことがあり、その場合は意図した効果が出ないまま、十分に使われずに終わってしまうといったことが多いのだそうです。
例えば、穀物を貯蔵する倉庫が必要だということになったとして、欧米や日本で見られるようなエレベーターがついた大型の貯蔵庫を寄贈しても、電気がコンスタントに供給されなかったり、メンテナンスが出来なかったりをいうことで、使えなくなってしまうようです。実際に廃墟化した大型の施設が見られました。
一方、パビディアプロジェクトでは、倉庫を作るのは現地の人たちです。ただし、作る前にその倉庫が本当に穀物を効果的に貯蔵できるためにはどうなっていればいいのかを議論するのです。
たとえば、風通しをよくするためには、窓を両側に設置することとか、古いものを残さないように先入れ先出しの大切さをトレーナーが教えて、現地の方にそれがやりやすい出入り口を考えてもらうのです。
現地の材料と技術で作る倉庫ですから、見た目はあまりよくないのですが、すべて自分たちで作ったものなので、修理も改造も全部自分達でできます。
そして、そういうことを続けていくうちに、次はどんなことをしたいかといった進歩向上に向かう議論が始まるのです。
このプロジェクトはまだ始まって間もないのですが、かなりの成果が出ており、欧米からの視察団も研究に訪れているということでした。
私はこのパビディアプロジェクトを見て、これはカイゼン活動だなと思いました。本当に困っている人たちが、限られた原資を有効に使うために、みんなで現場・現物で議論をして、助け合って実行するのです。
ザンビアはまだ識字率も40%と低く、国土もとても広いため、情報の共有化も簡単ではないのですが、このプロジェクトが狙っている自分達で一歩一歩前進して行くやり方は大変に効果的だと感じました。
今回のアフリカ・ザンビアでの経験を通じて、私は改めて日本でも現場・現物、そして情報の共有化といった極々基本的なことを再確認することが大切かもしれないと思いました。
copyright yukichi
※柿内先生に質問のある方は、なんでも結構ですので下記にお寄せください。etsuko@jmca.net