税金の納付が遅れて、所有不動産を差押えられることはよくあります。
税務署や市役所などと話し合い・納付をしても、先方の満足のいくようなかたちでの納付ができないときなどに差押えが行われるわけです。
所有不動産の時価が2,000万円で、銀行の根抵当権がそれ以上の金額で設定されていて、 対応借り入れも3,000万円~4,000万円ある場合など、差押えなどこないだろうと思っている方も多いと思いますが、じっさいには余力があろうとなかろうと差押えはされます。
これは地方税法でいえば331条(*注1)という条文があるからで、滞納者の事情に関係なく行われます。
余力がない不動産に差押えがされた場合、担保をつけている銀行が請求によって期限の利益喪失をすることも多く、
期限の利益喪失の結果、借入金の全額一括返済を銀行から要求されます。そして、支払えなければ最悪の場合、抵当権に基づく競売が行われます。所有不動産が自宅や作業場・工場などの場合、税金の滞納→差押えという結果によっては自宅が競売される、工場が競売されて製造ができなくなるといった悲惨な事態を招くことも多いのです。
しかも、こんなにたいへんなことが起こるのに、税金滞納の結果、どのように資産が調べられて、何が起こるかはネットはおろか、書籍でも詳しくは伝えられていません。
また、所有不動産のみならず、滞納者の銀行預金・売掛金なども税務署はもちろんのこと、市役所なども日常的に調査しており、差押えしてくることもあります。
それゆえに、税金滞納の結果、資産がどのように調べられて、どんなふうになっていくのかを、税務署と、それ以外の役所で分けて実例をもとに書いてみようと思います。
ちなみに、なぜ税務署とそれ以外で分けて書くかというと、直接所有する情報量が両者では格段に違い、それによって行われることにも違いがあるからです。
まず、最初に税金滞納後の流れをわかりやすく図にしました。このフローを基本に次回から具体的に書いてみます。
*注1 関係法令 参照:E-GOV地方税法
(市町村民税に係る滞納処分)
地方税法第331条
市町村民税に係る滞納者が次の各号の一に該当するときは、
市町村の徴税吏員は、当該市町村民税に係る地方団体の徴収金につき、滞納者
の財産を差し押えなければならない。
一 滞納者が督促を受け、その督促状を発した日から起算して十日を経過した
日までにその督促に係る市町村民税に係る地方団体の徴収金を完納しないとき。