menu

経営者のための最新情報

実務家・専門家
”声””文字”のコラムを毎週更新!

文字の大きさ

経済・株式・資産

第33話 鄧小平と毛沢東の「戦争」―薄煕来失脚事件研究(5)

中国経済の最新動向

 今回のコラムは大物政治家、重慶市書記薄煕来氏の失脚事件による中国経済への影響があるかどうか、また「親日派」と呼ばれる薄煕来の失脚は日本企業の中国ビジネスに影響を及ぼすかどうかに焦点を当て、解説を進めたい。
 
 薄煕来氏は中央政府の主要幹部ではなく、あくまでも地方実力者である。まずこれまで中国の地方実力者が失脚した場合、中国経済への影響を検証しよう。
 
 図1は陳希同・北京市書記が失脚した前後、北京市と中国全体の経済成長率の推移を示すグラフである。陳希同氏が失脚したのは1996年。この年、北京市のGDP成長率は9.2%で、95年の12.4%より3ポイント以上低下した。その後、北京市経済は回復し、99年まで3年連続で成長率が上昇した。つまり、陳希同失脚は北京市経済にダメージを与えたのは確かだが、その影響は一時的なものにとどまったと言える。
 
china33_01.jpg なお、中国経済全体への影響は、図1の通り、ほとんどなかったと見られる。
 
 図2は陳良宇・上海市書記失脚前後の上海市と中国全体の経済成長率の推移を示すグラフである。図の通り、陳良宇失脚の2006年、上海市のGDP成長率は9.8%、翌年の07年は11.8%、いずれも失脚前の2005年(8.8%)より高かった。
 中国全体も06年12.7%、07年14.2%と、95年より高い。つまり、陳良宇・上海市書記失脚は上海市にも中国経済全体にも一時的な影響さえなかったのである。
 
china33_02.jpg 今回の薄煕来失脚は、重慶市経済に一時的な影響を及ぼすことは避けられない。昨年重慶市の成長率は16.4%にのぼるが、今年1-6期は14%となっている。ただし、その影響は限定的なものにとどまると見て良い。
 
 なお、中国経済全体への影響はほとんどないと、筆者は見ている。中国経済の成長率は2011年9.2%から今年の8%前後に減速する見通しだが、これは薄煕来失脚の影響ではなく、ユーロ危機の影響だと思う。
 
 それでは「親日派」と言われる薄煕来氏の失脚は日本企業の中国ビジネスに影響を与えるでしょうか?
 
 薄氏は大連市長時代、積極的に日本企業を誘致し、投資環境の整備に注力してきた。商務大臣在任中の2005年に、中国の若者たちは当時の小泉首相の靖国参拝に反発し、各地で反日デモや日本製品不買運動を起こした。その際、薄氏は日本製品の不買運動に対し、「日中双方にとって不利益になる」と訴えた。2007年重慶市書記就任後、ローソンなど日本企業の重慶進出に力を入れた。この意味では、薄煕来氏は「親日派」と言われて、過言ではない。
 
 「親日派」薄煕来の失脚によって、日本企業は「後ろ盾」を失うのではないかと懸念する声が出ている。この心配は理解できるが、実際は不要と思う。改革・開放は中国の国策であり、誰が薄煕来氏の後任になっても、改革・開放政策を続行させ、日本企業との良好な関係を保つだろう。これは中国と重慶市の経済発展のためになるからだ。
 
 実際、薄煕来失脚後、重慶市長が最初に会談した外国ミッションは日本からの訪中団である。3月19日、薄失脚4日後、重慶市長黄奇帆氏は中小企業庁長官鈴木正徳を団長とする日本中小企業訪中団と会談し、日本中小企業との交流・協力をさらに強化する意向を示した。薄煕来の後任である張徳江副首相兼重慶市書記も日本企業の重慶進出を歓迎する意向を重ねて示している。
 
 要するに、薄煕来失脚は、あくまでも中国の内政であり、対外関係に影響することや日本企業の中国ビジネスに打撃を与えることなんか、とうてい考えにくい。

 

第32話 鄧小平と毛沢東の「戦争」―薄煕来失脚事件研究(4)前のページ

第34話 「秘密選挙」の結果から見た中国の党大会人事次のページ

関連セミナー・商品

  1. 沈 才彬(しん さいひん)「爆発する中国経済」CD

    音声・映像

    沈 才彬(しん さいひん)「爆発する中国経済」CD

関連記事

  1. 第78話 中国は「中所得国の罠」に陥るか

  2. 第58話 今年は中国不動産バブルの転換点になる

  3. 第159話 中国の景気悪化より米国発の世界同時不況が大問題

最新の経営コラム

  1. 第68回 季節の移ろいを言葉で感じて心豊かな秋の時間を

  2. ビジネス見聞録WEB p4|3分でつかむ!令和女子の消費とトレンド/【第11回】令和女子とサステナブル消費

  3. ビジネス見聞録WEB p3|今月のビジネスキーワード「メタバース」

ランキング

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10

新着情報メール

日本経営合理化協会では経営コラムや教材の最新情報をいち早くお届けするメールマガジンを発信しております。ご希望の方は下記よりご登録下さい。

emailメールマガジン登録する

新着情報

  1. 経済・株式・資産

    第81回「米金融緩和の出口は次の強気相場の入口か?」
  2. 健康

    第7回 会社の「欲求」を再発見して育てる!
  3. 社員教育・営業

    第23話 「ピンチはチャンス!有難う!」の精神やで
  4. 教養

    第99回「赤狩り」(著:山本おさむ)
  5. マネジメント

    第十四話 メッセージが伝わる仕事をしよう(ラストリゾート)
keyboard_arrow_up