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第25話 常識を疑う作業は、やはり大事だ

北村森の「今月のヒット商品」

 暑い毎日が続きますね。夏の風物詩、いくつもありますけれど、今回は「食」に関する話です。

ハモについて触れたいと思います。西日本を中心に、この時期、多くの人が好んで口にしますね。

 

 ハモとヒット商品? どんな関係があるのかと感じられるかもしれませんが、

私、先日、ある割烹で、ハモをめぐる話から、ヒット商品づくりに大事な考え方を学べましたので、

皆さんにお伝えする次第です。

 

1.jpg

 

 この画像は、ハモの刺身です。普段、私たちが料理店で目にするハモと、

少し(というか、かなり)違う姿なのがお分かりいただけるでしょうか。

 

 そうなんです。骨切りしていないハモの身を、そのまま刺身で出しているんです。

 

 ハモは骨が厄介な魚です。そのため、いつしか、その身をわずか数ミリ単位で刻み(皮目は切らずに残しますね)、

それを調理するという手法が定着しました。その工程を骨切りといいますね。定着している、

というより、ハモを調理するうえで骨切りはもはや常識と言ってもいい。

 

 よく、多くの料理店で提供されるハモの刺身は、骨切りしたハモの皮目を軽く炙って提供されるものがもっぱらです。

でも、この割烹のハモは、骨切りしていない。ほかの魚の刺身と同じく、皮は引いてあり、骨切りで身を刻んでもいない。

 

 口にしてみると……。これが旨いんです。ハモの身の甘みが充分に感じられますし、何より、舌触りが滑らかです。

ハモってこんなだったのか、と驚きを新たにしました。食通が好むオコゼの刺身に近い印象といえば、伝わりますでしょうか。

 

 さあ、ここはどこの割烹か。愛媛県松山市の繁華街である二番町に店を構える「出汁茶漬け 網元茶屋」で、

私はこのハモを食べました。愛媛と言えば、ハモの一大産地ですね。

 

 どうしてまた、骨切りしないのか。

 

 「骨切りって、身にたくさんの包丁を入れて刻むわけでしょう。魚の身には包丁を入れすぎないほうが美味しいのは

当然だと私は思います。それは調理の原則でもある。だからこうしてお出ししている」

 

 しかしですよ。骨切りの必要がある魚だから、ほぼすべての料理人はそうしてきたのではないですか。

 

 「いえ、古くは、こうして骨を完全に抜き去る手法があったんです。今は廃れてしまっただけ」

 

 ハモの骨は、まっすぐではなく、身から綺麗に取り去るのは大変なのだそうです。

それでも、「網元茶屋」のご主人は、昔あった手法の会得に力を注ぎ、苦心のすえ、そして果たしたといいます。

 

 「その技法を体得すれば、骨切りよりも手早く、骨は綺麗に取り去れます。つまり、仕込みの場面で身を

あまりいじくらないという点でも、この技法には意味があるんです」

 

2.jpg

 

 こうして骨切りしないで骨をすべて取り去ったハモは、焼きハモにすると、また違った真価を発揮してくれた感じでもありました。

 

 肉厚で、しかも旨味が乗っている。てっきり、よほどの上物のハモだからこうなったのかと思ったら、それだけではないらしい。

 

 「骨切りしない、つまり、刻んでいないからでしょう」

 

 だからこそ、ここまでふっくらと仕上がり、ハモの美味しさをそのまま堪能できたというわけですね。

 

 「骨切りしないハモは、料理の自由度が増します。煮ハモにしても素晴らしい味わいになりますし、

刺身にするために引いた皮を使って、煮こごりをつくることもできますしね」

 

 なるほどと納得のいった話でした。

 

3.jpg

 

 それにしてもです。どうして、多くの料理人は、ハモを骨切りするのか。

 

 「ハモ=骨切りと信じきっていて、ほかの手法に考えが及ばないのではないのでしょうかね」

 

 そうか。骨切りすることに疑いを持つことがなかったわけですね。骨切りすれば、料理人の技術を示すことにもなるし

(わずか数ミリ単位で、しかも皮目を残して刻むわけですから)、お客の側もこれこそがハモと信じている。

 

私だって、ハモは骨切りが当たり前と、つい先日までは何の疑いもありませんでした。

でも、この割烹の、べらぼうなハモを食べてしまうと……。

 

「業界の当たり前」を疑う、「消費者の思い込み」に斬り込む。

 

これがヒット商品づくりに大事な考え方だと、「網元茶屋」のハモを口にしながら、改めて感じました。

食に関する話だけではもちろんありません。家電製品だって、生活雑貨だって、

ありとあらゆる商品分野に共通する要素ではないでしょうか。

 

「網元茶屋」の話が痛快なのは、なにも奇をてらったわけではなく、古くには存在した技法を復活させた、

という点にも理由がありますね。ヒットの種は意外や、足許にあるかもしれない、ということかもしれません。

 

 

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