第二会社方式(注1)で事業を再生する会社は多いのですが、一般に知られている中小企業活性化協議会による再生、会社分割や事業譲渡ではなく、なし崩し的に事業じたいを次の会社に移して社長も株主も変えて生き延びるやりかたを選ぶほうが圧倒的に多いのが実情です。当たり前ですが法的な再生や、再生支援のスキームで再生する場合、銀行が提示する条件は一部債務の免除であったり、リスケジュールであったりと融資の返済が前提で話が進み、多くの社長は期待していたものとは違うと感じるようです。また、債務が多ければ多いほど再生できる可能性は低く、資金がなくて破たんしたのに余計なおカネが必要になるので無理難題だと当事者は考えるようです。
なし崩し的に事業じたいを次の会社に移す方法は、最小限の資金でうまくいき、債権者からの監視や、要求に頭を悩ますことも少ないのが実情ですが、従来からおこなっていた事業の利益率はもちろんですが、流動比率、なかでも当座比率(注2) が高くなければ再び破たんの道を歩むことになります。
なぜ当座比率が高くなければならないかというと、当面の間、第二会社は借入が困難であり、資金ショートが即命取りになるからです。一般的に第二会社の社長は破たんした会社の社長の妻であることが多く、そこから旧会社との関連性が問われ融資がでなかったり、作業場、工場などが必要な事業ではどこに作業場、工場があるかで旧会社との関連性が問われたり、また、株主名から旧会社との関連性がわかったり、第二会社の決算書の地代家賃等の内訳書に旧会社名がでてきたりで、かんたんに第二会社であるとわかってしまうのです。
そう考えると事業を継続するのに特定の場所が必要ではなく、役員も株主も異なり、当座比率も高い第二会社であれば、うまくいきそうですが、通常月の資金繰りとは異なる決算後の税金負担による資金繰りへの影響も迅速に想定し対処できなければ、税金の滞納によって第二会社は再び破たんの道を歩むことになります。
税金・社会保険料等の滞納は、こちらの事情を考えてくれることなどないため、銀行融資の延滞よりも怖いものです。それゆえに経理が自社内でできることはもちろんのこと、そこから出力されたデータが利益、納税額にどう影響するかがわかるかが重要になります。法人税の申告書でいえば別表まで含めて理解できる人間が社内にいて、かつ、経理処理が迅速でないとこれは難しいものです。
(注1)第二会社方式
債務超過などになった企業が採算性の良い事業を別の会社に移して事業を継続する方式
(注2) 当座比率
流動比率も当座比率とは、企業の短期的な債務支払能力を測る指標ですが、
当座比率の分子には、棚卸資産などが含まれていないため資金化が早いものが多いです。
それゆえにこの比率が高ければ支払い能力が高く安全であると言えます。