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第59回 新しい商品領域をはぐくむ覚悟

北村森の「今月のヒット商品」

 このコラムで以前に取り上げた商品を振り返るまでもなく、家電製品の領域において、この10年間ほどの流れをひとつ挙げるなら…。それは、いまや家電製品は大手メーカーだけのものではなくなった、という話かと思います。

 

 中堅中小企業やベンチャー企業による家電ヒット商品が数々登場しています。背景はふたつでしょう。ひとつは、企業の過去のネームバリューを消費者がさほど気にせず購入するようになったこと。もうひとつは、大手メーカーにちょっと元気がなかったこと。元気がなかったと言いますか、思い切る覚悟がなかったと表現しても差し支えないかもしれません。

 

 高級オーブントースターも、高性能扇風機も、あるいは高機能フードプロセッサーも、この10年で販売数を伸ばしていますけれども、それぞれの市場を最初に切り拓いたのは大手メーカーでは決してありませんでした。大手どころは後追いだったんです。

 

 でもここにきて、大手メーカーからも、これはと感じさせる商品がまた登場し始めています。なかでも私が評価したい事例を今回はお伝えしましょう。

 上の画像がそれです。「REON POCKET 3」といいます。今年(2022年)4月の発売で、本体の値段は1万4850円です。

 

 この商品の本体は、手のひらに乗るほどのサイズ感で、しかも薄い。何をしてくれるものかと言いますと…。まず、別売りのネックバンド(上の画像はそれを着けた状態です)を使うなどして首の後ろ側に密着させます。そして、スマホアプリで操作すると、ちょうど身体に触れるところにある金属面の温度が変わります。夏はひんやり、冬はあったかになるという仕組み。ガジェット(小物)好きの間では「着るクーラー」という呼ばれ方もしています。

 

 熱中症を防いだり、少しでも夏を快適にすごしたりするための商品としてはすでに、風を送るファンを備える服というのがありますね。でも、この商品ならば着る服を選びません。また、実際に着けてみると、さほどの負担は感じられず、すごく邪魔になるというほどでないのがまたいい。

 

 商品名をもう一度書きますね。「REON POCKET 3」です。この名からたやすく想像できると思いますが、この商品、第三世代機なんです。

 

 初代は2019年、クラウドファンディングで公開されて、最初の1週間で6600万円もの支援を獲得しました。一般販売をスタートさせたのは2022年。で、翌年の2021年には第二世代モデルが登場し、そして今年は早くも第三世代機の発売です。

 

 つまり、名車がイヤーモデルを出して中身を少しずつブラッシュアップしていくのと同じように、この「REON POCKET」シリーズも、地道な改良を重ねているという話です。今回の「3」でいいますと、本体内に温度センサーと加速度センサーを備えました。それらによってユーザーの動きを捉え、好みの冷却温度帯を保つモードを新しく搭載しています。また、ユーザーが本体を着けたり外したりするたびに、稼働が自動でオン/オフとなるようにもしました。

 

 「REON POCKET 3」の操作系はかなりシンプルでラクにできていますから、たとえば農作業にいそしむシニア層にも抵抗はないはずです(スマホアプリさえ使えれば…)。ウェアラブル端末という存在は6年ほど前から注目されてきましたが、ようやくここにきて、文字どおり誰にでも親しめそうな商品が出てきた、という印象も抱きました。

 

 私がなぜこの商品を評価するか。ソニーという大手企業が、未知数の商品領域に果敢に挑み、さらには新商品をただ一度出すだけでなく、先に触れたとおり、イヤーモデルをはぐくむかように地道な努力を続けているという点に好感を覚えたからです。

 

 こうした類いの商品は、なにも一気に100万台、1000万台と販売達成できるような領域ではありませんね。でも、それをわかっていながらも、開発陣が努力を続けている。

 

 その姿勢自体が、同社にとって、また次の大きな一手を繰り出す原動力につながるのではないか、と私は予想しています。

第58回 常識を疑うと、ヒットが生まれる前のページ

第60回 使い方を決めるのは消費者次のページ

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