昨年第4四半期以降、中国経済好転の兆しが出ている。
先ず、GDP成長率を見よう。2016年、中国経済は3期連続の6.7%成長を記録した後、第4四半期は6.8%と前期より0.1%を上昇した。既に発表した今年1月の経済指標を見る限り、今年第1四半期の成長率は昨年通年の実績6.7%を下回ることはまず無いと見ていい。
次に中国の景気動向を敏感に反映する製造業と非製造業購買者指数を検証しょう。景気の好不況を測る分岐点は50とされる。それを上回ると景気拡大、下回ると悪化を示す。
図1のように、中国の製造業と非製造業購買者指数は両方とも明らかに好転し始めたのは昨年10月だ。製造業購買者指数(PMI)は16年10月51.2、11月51.7、12月51.4、今年1月51.3と4カ月連続で51を上回る。同時期の非製造業購買者指数もそれぞれ54.0、54.7、54.5、54.6と4カ月連続で54を超える。言い換えれば製造業とサービス業はいずれも景気拡大の動きを示している。
出所)中国国家統計局。
中国の輸出入データも景気拡大の動きを裏付けている。今年1月、中国の輸出金額は人民元ベースで前年同月比15.9%増(米ドルベース7.9%増)、輸入は25.2%増(米ドルベース16.7%増)と、いずれも大幅に増加している。そのうち鉄鉱石、石炭、原油、銅鉱石など資源・エネルギー類の輸入の数量ベースの増加は次の通り。
*鉄鉱石 12%増(人民元金額ベースで103%増、以下同)
*石炭 64.4%増(金額249.6%増)
*原油 27.5%増(金額87%増)
*銅鉱石 6.9%増(金額28.4%増)
資源・エネルギー類の輸入量の大幅増は国内生産活動の活発化を示すものであり、中国経済の景気動向を測る重要な判断材料ともなる。
以上に述べた通り、中国の景気好転は確かである。ただし、底がついたという景気判断はなお時期尚早だ。それを見極めるには少し時間がかかる。
発表済の中国経済データのうち、筆者が特に注目しているのは物価指数の急ピッチな上昇である。中国政府の発表によれば、今年1月、消費者物価指数(CPI)は前年同月に比べれば2.5%上昇し、2014年6月以来30カ月ぶりの高い水準だった。生産者物価指数(PPI)は6.9%で、2011年9月以来5年4カ月ぶりの高い水準を記録した(図2を参照)。これによって、中国経済がデフレを脱却したという判断は妥当だと思う。
出所)中国国家統計局の発表により沈才彬が作成。
生産者物価は工業製品出荷価格のことであり、この指数の急速な上昇は資源インフレを示唆している。実際、昨年11月以降、中国工業製品出荷価格の上昇及びトランプ政権のインフラ整備計画や石油輸出国機構(OPEC)の減産措置等によって、国際資源・エネルギー価格も急騰している。
図3に示す通り、今年1月時点の鉄鉱石、石炭、石油価格は、1年前に比べればそれぞれ91.5%、68.8%、96.1%と値上がりした。同時期のアルミと銅の価格もそれぞれ20.8%、28.7%上昇した。資源価格の高騰は、長引く価格低迷を喘いできたオーストラリア、ブラジル、ロシア、インドネシアなど資源国にとっては追い風となっている。
出所)IMF-Primary Commodity Pricesにより沈才彬が作成。
注)月間平均。鉄鉱石は中国輸入価格。石炭は豪州産石炭FOB価格。
原油はドバイ原油 価格。
いずれにせよ、今年、中国発インフレは世界に拡散する可能性が高い。日本企業は資源インフレ再来の影響を見逃さず、早急に対応策を取らなければならない。