今回のまとめ
高橋社長と賛多弁護士とのやりとりにもありましたが、法改正により、賃金のデジタル払いが可能となりました。
労働基準法24条1項本文では「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。」と、賃金の通貨払いの原則を定めています。もっとも、同項ただし書きにおいて、「ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払」うことができると定められています。
そして、労働基準法施行規則7条の2第1項柱書で「使用者は、労働者の同意を得た場合には、賃金の支払について次の方法によることができる。ただし、第三号に掲げる方法による場合には、当該労働者が第一号又は第二号に掲げる方法による賃金の支払を選択することができるようにするとともに、当該労働者に対し、第三号イからヘまでに掲げる要件に関する事項について説明した上で、当該労働者の同意を得なければならない。」とあり、同項1号では「当該労働者が指定する銀行その他の金融機関に対する当該労働者の預金又は貯金への振込み」と定められていますので、現在の高橋社長の会社のように、銀行振り込みで賃金を支払うことができます。
また、同項3号では、「資金決済に関する法律(平成二十一年法律第五十九号。以下「資金決済法」という。)第三十六条の二第二項に規定する第二種資金移動業(以下単に「第二種資金移動業」という。)を営む資金決済法第二条第三項に規定する資金移動業者であって、次に掲げる要件(以下のイ~チ)を満たすものとして厚生労働大臣の指定を受けた者(以下「指定資金移動業者」という。)のうち当該労働者が指定するものの第二種資金移動業に係る口座への資金移動」と定められております。
ここでいう指定資金移動業者の詳しい要件については、労働基準法施行規則7条の2第1項第3号のイ~チをご参照ください(労働基準法施行規則 | e-Gov 法令検索)。
つまり、賛多弁護士と高橋社長の会話にあったように会社は、事前の労使協定(労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合との協定)を締結した上で、賃金のデジタル払いを希望する従業員に、制度の説明をした上で、必要事項を記載した同意書を提出してもらうことにより、賃金のデジタル払いを導入することができるようになります。
なお、2024年8月9日に、資金移動業者として「PayPay株式会社」が初めて厚生労働大臣の指定を受けております。
参照:資金移動業者の口座への賃金支払(賃金のデジタル払い)について|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
執筆:鳥飼総合法律事務所 弁護士 渡邉宏毅
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