生活用品やインテリア雑貨のお店を経営する高橋社長が、賛多弁護士のもとに相談に来られました。高橋社長によると、従業員に対する賃金の支払いについて相談があるようですが…。
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高橋社長:2024年7月から新しいお札が発行されましたね。1万円札の渋沢栄一、5千円札の津田梅子、千円札の北里柴三郎、全て手に入れることができました。
賛多弁護士:そうなんですか。実は、私は、日常生活でほとんど現金を使用していないので、まだ新札を見ておりません。
高橋社長:わが社の従業員も同じようなことを言っておりました。最近は、ほとんど現金を使用しておらず、もっぱら電子マネーを使用しているので、新札を見たことがないようです。ところで、先生にお聞きしたかったのは、従業員に対して賃金をデジタルで支払うということはできるのか、ということです。
賛多弁護士:結論から申し上げると、まさに、2024年8月より可能となりました。
高橋社長:ほんとに最近ですね。たしか、賃金の支払いについては、労働基準法で定められていましたよね?
賛多弁護士:おっしゃるとおりです。労基法24条により、賃金は通貨で支払うことが原則と定められております。
高橋社長:ちなみに、わが社は、現在、従業員に、銀行振り込みで賃金を支払っていますが、大丈夫なんですか?
賛多弁護士:大丈夫です。従業員の同意があれば、銀行振り込みで賃金を支払うことができます。おそらく、ほとんどの会社が賃金を銀行振り込みで支払っており、賃金を直接通貨で支払ってる会社は少数のように思います。
高橋社長:そうですよね。そうすると、賃金のデジタル払いも、労働者の同意を得れば可能なのでしょうか。
賛多弁護士:まず、事前の労使協定(労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合との協定)を締結する必要があります。 その上で、賃金のデジタル払いを希望する労働者は、制度の説明を受け理解した上で、同意書に必要事項を記載して、使用者に提出することになります。
高橋社長:結構手続きは大変そうですね。
賛多弁護士:たしかに、銀行振り込みと比べると必要な手続きは多いです。
高橋社用:ところで、デジタル払いと言っても、具体的に可能な電子マネーの種類は何でしょうか。
賛多弁護士:2024年8月9日に、資金移動業者として「PayPay株式会社」が初めて厚生労働大臣の指定を受けました。
高橋社長:従業員の同意やその他の要件をクリアすれば、現時点で、PayPayで賃金を支払うことは可能なのですね!
賛多弁護士:近いうちに、「PayPay株式会社」以外の他社も、厚生労働大臣の指定を受けるものと思われます。
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