創業から8年余りを迎え、業績も順調に伸びているメーカーのオーナーである佐藤社長。コロナが若干落ち着いてきたこともあり、同業の経営者と直接会って話す機会が徐々に戻ってはきたが、その会話の中で少し気になることが・・・と考えていたちょうどその時、賛多弁護士が来社しました。
そうだ!賛多弁護士に聞いてみよう!!
* * *
賛多弁護士:佐藤社長、コロナや材料費の高騰にも負けず、業績は右肩上がりですね。
佐藤社長:はい、おかげさまで創業以来、これといったトラブルもなく、従業員の離職もほとんどありません。賛多弁護士のご指導のおかげです。ところで、ひとつ質問をしてもよろしいですか?
賛多弁護士:もちろんです。なにかお困りのことがございましたか?
佐藤社長:いえ、困ったことではないのですが、最近、経営者の間でも相続について話す機会が増えまして、その際にみんなが必ず、生命保険に入っているからお金の心配はするなと家族に伝えている、というのです。
賛多弁護士:確かに、生命保険に加入していれば、お金に関する心配事は減りますものね。それがどうしましたか?
佐藤社長:もしも私が死んだら、保険金が会社に入ることはもちろん分かりますが、それがどうして私の家族にとって安心といえるのでしょうか。だって、お金は会社に入るのですよね。
賛多弁護士:なるほど。例えば、契約者が会社、被保険者が社長、保険金受取人が会社という形態で保険に加入したのち社長が亡くなられますと、保険金は会社に支払われます。そのままでしたら、お金は会社に残ったままですが、社長の生前にあらかじめ「役員退職慰労金規程」を作っておいて、もしも社長が亡くなった場合には、死亡退職金が「社長の奥様、もしもいない場合にはお子様に支払われる」などといった文言を入れておけば、いったん会社に入った保険金をご家族にお渡しすることは可能です。
佐藤社長:つまり、会社が受け取った保険金を原資にして、家族に退職金が支払われる仕組みを会社で作らなければならない、ということですか。
賛多弁護士:そうです。役員退職慰労金、いわゆる役員の死亡退職金の支給は、会社法に基づき会社の定款に定めるか、株主総会の決議による必要があります。ですから、奥様やお子様に、確実に退職金が支給されるようにするためには、役員退職慰労金規程を作成する必要があります。特に、会社に入った保険金は、亡くなった方のものではなく、あくまでも会社のものですから、例えば、次の役員が保険金の全額を銀行借入の返済に充ててしまったら退職金の原資がなくなり、ご家族に退職金が支払われない、といったことも考えられます。そのようなことを防止するためにも、規程は必要といえます。
佐藤社長:そうすると、やっぱり会社で保険に入っただけでは足りないのですよね。その点がどうもピンと来ていなくて・・・私もそろそろ会社で保険に入ろうかと検討をし始めたところでしたので、ぜひ賛多弁護士に役員退職慰労金規程を作って頂きたいのですが、お願いできますか。
賛多弁護士: 喜んでお受けいたします。ただ作るだけでなく、規程の内容がしっかりとしていなければ、社長のご意思を実現できず、また、保険の効果も最大限に発揮できませんから、改めて時間をお作り頂き、より細かいヒアリングをさせて頂きたいと思います。
佐藤社長:ありがとうございます。とても心強いです。そうだ!賛多弁護士、せっかくですから、相続についてもっと教えては頂けませんか?
賛多弁護士: 分かりました。次回のご訪問時にまたご説明します。
* * *
賛多弁護士の説明にもあるとおり、死亡役員に対する死亡退職金等の支払先を明確にするような役員退職慰労金規程でないと、まさに「絵に描いた餅」となってしまいます。役員退職慰労金規程をすべて明文化している会社は、50人以下の規模では16%、100人以下の規模では31%、300人以下の規模では47%という統計もあります。会社が生命保険に加入することと、会社が「確実に」「ご遺族へ」退職金を支払うこととは別ですから、これを機に一度、規程の見直しをされることをおすすめ致します。
執筆:鳥飼総合法律事務所 税理士 田坂 尚靖