人材獲得競争時代を勝ち抜く羅針盤
企業の成長戦略において、人材の確保と定着が最重要課題であることに異論はないでしょう。人手不足と賃上げの波が続く中、単なる労働力ではなく、企業を牽引する「人財」をいかに惹きつけ、その活力を最大限に引き出すか。これが、未来の成長を左右します。
そして、いま働く人が企業に求めるのは「ただ働くこと」ではなく、「心身ともに健康で、充実感をもって働ける(ウェルビーイング)職場環境」です。しかし、「ウェルビーイング経営」を掲げても、「具体的に何をすればいいのか?」「その投資効果はどう測るのか?」と悩む方も多いはずです。
その答えの一つが、厚生労働省などが推進する「公的認証制度」です。これらの認証は、その企業の「人」への真摯な取り組みの社会への証明書のようなもので、厳しさを増す人材市場を勝ち抜くための、いまや、重要なツールとなっています。
「ワークライフバランス無視」論争が示すもの
昨今、自民党総裁選挙で総裁に選出された女性政治家が「ワークライフバランスを無視する」と発言したことで物議を醸すことがありました。この物議の背景は、「成長のためには長時間労働も厭わない」という旧来の価値観と、「心身の健康や家庭な人生の充実があってこその仕事」という価値観のぶつかり合いです。
この発言の是非はさておき、新総裁は、女性の働きやすい職場の整備や多様な働き方の促進など、働く環境の改善政策を掲げています。少子高齢化が想像を絶するスピードで進む日本において、企業が持続的に成長するためには、出産、子育て、介護といった人生のステージを働きながらクリアできる環境が必須なのです。
求職者の立場からすれば、賃金も上げてほしいが、時にはそれ以上に、「プライベートや家庭の充実」と「キャリア」の両立が保証されているかを重視しています。特に、若手人材にとっては、妊娠出産などのライフステージに対応できる職場かどうかは、職場選びの最重要テーマの一つです。また、そうしたステージの人がいるチームの別の人たちが、無理を抱えることのないように整備することも、忘れてはいけない会社の課題です。自分が休みやすくても、他の人が休んだ時にたちまち苛酷になるようでは、長期的に見て働きやすい職場とは言えません。むしろ、負担を押し付け合う不満多めの組織になってしまうでしょう。そうしたことも含めた仕事環境の整備は、賃金アップという一時的なインセンティブを超えて、社員の定着を促し、チームワークを高め、人材育成に最も高い効果をもたらす可能性を秘めているのです。公的認証は、この「働きやすさ」という見えにくい価値を、客観的に証明してくれます。
なぜ認証が「選ばれる理由」になるのか?
現在の採用市場では、新卒学生も転職希望者も、そしてインターン生でさえも、企業選びにおいて「働きやすさ」の証拠を徹底的に探しています。例えばある会社を調べる際には、必ず、「残業時間」や「離職率」といったシビアなキーワードと共にネット検索しています。
抽象的な「社員を大切にしています」というメッセージは、もはや響きません。彼らが求めているのは、国が定めた基準をクリアした「安心の可視化」です。認証マークは、その企業の労働環境が公的に保証されていることを意味し、少なくとも、そこに意識を持っていることを示すものです。























