menu

経営者のための最新情報

実務家・専門家
”声””文字”のコラムを毎週更新!

文字の大きさ

人事・労務

第17講 「その不正、防げます」
ウェルビーイング経営から考える本当に有効な不正防止策とは

顧客・社員・社会から支持される「ウェルビーイング経営入門」

 横領、情報漏えい、粉飾決算、表示偽造、ハラスメントなど、企業での不正やコンプライアンス違反事件は後を絶ちません。本コラムをご覧の経営者の方は、「まさか、うちの会社に限って」とは思っていませんよね?

 残念ながら、不正はどんな組織でも起き得ることです。そして、ひとたび不正が明るみに出れば、会社の信用は失墜し、取り返しのつかない事態に陥ることもあります。

 また、不正は企業業績を悪化させるだけでなく、経営陣の責任問題にもつながるという意味で、経営人生に大きく影響します。もちろん、働く従業員の人生をも狂わせる可能性があります。今日は、企業不正について、ウェルビーイング経営の観点から考察するとともに、カギとなる不正のトライアングル理論もご紹介します。

 

1 コンプライアンス違反が起きるメカニズム

 そもそも、なぜ組織で不正が起きてしまうのでしょうか。不正はいけないことだと誰しもがわかっているのに、どうして不正は絶えないのでしょうか?

 この点について、アメリカの組織犯罪学者であるドナルド・R・クレッシーは、職場での不正の原因として、「動機」「機会」「正当化」という「不正のトライアングル」理論を提唱しています。これは、人が組織内で不正を起こす時、この3つの要素が同時に成立しているというものです。

 

2 不正のトライアングル3つの要素

①「動機」の存在

 ここでいう「動機」とは、本人が不正を行う精神的な引き金となるものです。
 例えば、金銭的に困っている、職場の人間関係が悪い、仕事のストレス、会社に対する信頼感の薄さ、などが挙げられます。

 もちろん、金銭的に困っているからといってすぐに不正に走るわけではありません。人間関係の不良さや、職場へのストレス、信頼感の薄さなどが相まって横領などの不正に走る動機が形成されていくわけです。

②「機会」があること

 「機会」とは、本人に不正行為を可能とさせるような状況を指します。
 現金や小切手の管理権限を持つ立場、重要な情報を知り得る立場、あるいは権限者への管理システムの甘さなどがこれに該当します。牽制が働かない状況や、ルールが曖昧な環境は、不正の温床となりやすいのです。

③「正当化」ができること

「正当化」とは、本人が不正行為を合理化する余地のことです。

「これくらいなら大したことないだろう」
「最初は故意の無いミスだったが、誰も気づかないから繰り返してしまった」
「他の人もやっていたから」
 など、いわゆる言い訳に近い状況です。こうした正当化は、本人の倫理観の欠如に起因することもありますが、多くの場合はそれだけではありません。

 職場全体の規範意識の低さや、空気感が「正当化」を知らずと促しているケースも多数存在しています。小さなことでも、しっかりとフィードバックするなど、健全な職場環境を常に意識していかなければ、不正を「正当化」する隙を与えてしまいます。

 

 これらの3つの要素が同時に発生し、いわばトライアングル状態になったときに、不正事件は起きやすくなると考えられています。

 例えば、借金返済に困り、会社には相談できる関係もなく、売り上げ達成プレッシャーに負われて高ストレス下にあり(動機)、店長として売上金を動かす権限があり(機会)、最初は「少しだけ」「後で補充すればよい」という気持ちで売上金を持ち帰ってしまったところ、誰からも指摘されないため(正当化)繰り返してしまい、多額の横領事件に発展する、といったケースは実際に後を絶ちません。

次のページ3 不正のトライアングルを防ぐための経営基盤構築

1

2 3

第16講 「経営者の孤独」はなぜ危険か ―持続的な強さのための4つの処方箋前のページ

第18講 甲子園名門校の不祥事事案に学ぶウェルビーイング経営の本質次のページ

JMCAおすすめ商品・サービスopen_in_new

関連記事

  1. 第5講 二つのウェルビーイング経営の違い

  2. 第1講 ウェルビーイング経営のススメ―社長は今こそトップメッセージを―

  3. 第19講 採用と定着のカギは「安心の可視化」公的認証を活用して経営を前進させよう

最新の経営コラム

  1. 相談7:含み損のある土地があるのですが、別会社で買うのがいいか、個人で買うのがいいか、どちらでしょうか?

  2. 第9回 注意しても部下が変わらないのはなぜか? ~原因は人ではなく仕組みにある~

  3. 第146回 地味ながら世のクラウド化の追い風を受けて高成長を遂げる サイバーリンクス

ランキング

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10

新着情報メール

日本経営合理化協会では経営コラムや教材の最新情報をいち早くお届けするメールマガジンを発信しております。ご希望の方は下記よりご登録下さい。

emailメールマガジン登録する

新着情報

  1. 社員教育・営業

    第78回「身だしなみで聞かせる」
  2. サービス

    107軒目 「大阪名物になれるか?北新地の新名物!トリュフ蕎麦 トリュフ蕎麦わた...
  3. 人間学・古典

    第39講 「言志四録その39」歴代の史書を読むべし。上下数千年の事跡を羅ねて胸憶...
  4. 社長業

    第52回 人を大切にする経営
  5. 健康

    第31回 筋湯温泉(大分県) 腰痛や肩こりにも効く!? 日本最大級の「打たせ湯」
keyboard_arrow_up