2024年の年明けは、元日の能登半島地震と、翌2日のJAL機と海上保安庁機との衝突という衝撃的な出来事で始まりました。海保機の乗員の多数は残念ながら亡くなり、二つの機体はいずれも全焼する大事故でした。この規模の事故でありながら、JAL機の乗客乗員は全員避難を遂げ、特に、数百名の乗員を短時間に避難させた乗務員の対応は、世界からも注目を浴びました。そして、同月21日、JALは4月からの社長の交代を発表、JAL史上初の女性社長が誕生することも話題になっています。さて、本コラムのテーマはウェルビーイング経営、その点で注目すべきは、JALがそのローリングプランとして「ESG戦略を経営戦略の最上位」に設定している点です。
今回は、JALの様々な取り組みに注目し、ウェルビーイング経営とESG実践の具体例として取り上げてみます。
1 ウェルビーイング経営には二つの意味がある
まずは、ちょっぴりウェルビーイング経営についておさらいしましょう。
本連載の第5講で取り上げたとおり、ウェルビーイング経営には、大きく分けて、広義と狭義の二つの定義があります。
広義のウェルビーイング経営とは、顧客、取引先、従業員、ひいては地域、社会全体、未来などを自社のステークホルダーととらえ、それぞれのウェルビーイング(良い状態・幸せな状態)を作り出そうとする経営のスタンスです。
狭義のウェルビーイング経営とは、「自社従業員」の幸せにフォーカスした経営スタンスを言います。持続的に発展する事業展開のためには、まずは従業員を大切にせよ、という意味ですね。人的資本経営や健康経営などを包含する概念ともいえるでしょう。
なお、二つのウェルビーイング経営の違いに関する詳細は、こちらの「第5講 二つのウェルビーイング経営の違い」をご覧ください。
2 広義のウェルビーイング経営とESGサステナビリティとの関係
さて、今日取り上げるのは、広義のウェルビーイング経営です。上記のとおりさまざまなステークホルダーの幸せを実現するための模索ですから、経営者には高い視座が求められます。
そして、今回のコラムでもっとも重要なポイント、それは、ウェルビーイング経営はESG、つまり、サステナビリティ経営と非常に強い関連性・共通点があるということです。あまりにも大事なので、もう一度言います。ウェルビーイング経営はESG、サステナビリティ経営と非常に強い関連と共通点があります。
その共通点とは、企業は自ら社会的責任を果たす存在であるべきという責任感です。