2019年の2月、全額損金の保険商品は、国税当局の指摘を受けて、その姿を消しました。銀行や証券会社までが、「全額損金」の節税要素をアピールして売りすぎたからです。
その後、大きく節税できる商品が、1つだけ残されていました。
解約返戻率84.9%で、4割損金の商品です。
「4割損金ではなぁ…。」
と考えがちですが、解約返戻率の変化に特徴が隠されていたのです。契約4年後に個人で買い取ることで、会社はほぼ全額損金計上できる商品です。
名義変更による節税プランの保険商品として、重宝されていたのです。
その商品に、またもや国税のメスが入ったのです。全損商品が消えた2019年以降、目立った節税保険商品がなく、保険会社は残されたこの商品を、とにかく売りまくったのです。そして、よく売れたのです。
「いずれこの商品もきっと、規制が入りますよ。だから今のうちに勧めています!」
と、私の周りの生命保険会社の方々は皆、言っていました。いわば、案の定、の出来事なのです。
じゃあ全額損金など、節税のうまみがある保険商品はまったくなくなったのか、といえば、そうでもないのです。1つだけ残っていました。
「1人当たりの年間保険料が30万円未満なら、全額損金にできるので、いま、全損商品はこれだけが残っています。」
と、教えてもらいました。
事業保険という種類で、災害や重度疾病による死亡時の保険となる商品です。
解約返戻率は70%未満なので、69%~68%くらいのピークが10年続きます。経営者にそうお伝えすると、
「30%は戻ってこないならもったいない!」
という声を聞くことがあります。
しかし、想定外の死亡に対する保険機能はあるのです。それに、若干でも利益計上をコントロールできるのです。他にこれ以上の商品がない現状であれば、この保険商品も活用を検討する余地はあるのです。
また、福利厚生の意味合いをもたせた保険商品なので、課長以上、勤続10年以上など、任意の条件で選定した従業員のみの加入で対応できます。取締役のみ全員、でも構いません。要は、この条件の人たち、というくくりがあればいいのです。もちろん、全従業員が加入してもOKです。
「うちは全従業員で30人ほどなので、全員入ります。」
とおっしゃった経営者がおられました。
「全員でも900万円ほどですから、何ともありませんし、やらないより、やったほうが節税になって得かと思いますので。」とのことだったのです。
今のところ、1人当たりの年間保険金額が30万円未満と低いせいなのか、この商品は全額損金のまま、国税当局からなんの風当たりもなく残っています。活用余地がある会社は、保険会社の方に問い合わせて検討してみてください。
節税保険の商品は、国税と保険会社の、いたちごっこなのです。
今から12年前にも、国税の指摘で全額損金の保険商品はその姿を消したのです。しかしその5年後、外資系の会社が新たな切り口で全額損金の保険商品を開発したのです。外資系保険会社は、日本でのシェアを拡大するために、日本の大手生保会社にはない斬新な新商品が、どうしても必要だったのです。
今現在も、その状況はまだ、変わらないのです。
いずれまた、切り込み隊長のような外資系保険会社が、新たな節税商品を開発してくるはずです。
それまでは、今使える条件の商品を、節税に活用すればよいのです。