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第63回 南紀白浜温泉(和歌山県) 日本最古の歴史をもつ波打ち際の露天風呂

高橋一喜の『これぞ!"本物の温泉"』

■夕日の名所に湧く「絶景温泉」

 南紀白浜温泉は、三方を海に囲まれた風光明媚な景勝地だ。かつては新婚旅行のメッカとしても人気を集めていた。
 海岸沿いには大型のリゾートホテルが立ち並び、マリンリゾートとしてのイメージが強いかもしれないが、一方で、「日本三古湯」のひとつに数えられる歴史深い温泉地でもある。今も地元の人に愛される共同浴場が点在する湯の街だ。
 海岸沿いにある共同浴場「崎の湯」は、個人的に思い入れのある温泉である。なぜなら、私が温泉に興味を抱いたきっかけが崎の湯だったからだ。20年前、まだ20代前半だった私は、まったく温泉に興味をもっていなかったが、たまたま旅行で訪れた崎の湯のすばらしさに胸を打たれ、その後、温泉めぐりがライフワークとなったのである。
 崎の湯は露天風呂のみの共同浴場である(男女別)。簡素な脱衣所を抜けると、波打ち際に湯船が2つ。奥のほうに位置する湯船は、波しぶきがかかるほど海に近いから迫力満点。湯船から海までは数メートルの距離だ。

 崎の湯を訪れるたびに、太平洋に向かって全裸で仁王立ちしている人を見かけるが、そうしたくなる気持ちはよくわかる。大自然を前に、開放的な気分になるのだ。 
 初めて崎の湯に入浴したのは、夏の日の夕暮れだった。目の前に広がるダイナミックな海のパノラマに酔いしれる。しかも、茜色の夕日が水平線へと沈んでいく光景は、この世のものとは思えない美しさ。「温泉ってすごい!」。生まれて初めて温泉に感動した瞬間だった。

■万葉の時代から湧き続ける古湯

 崎の湯は、万葉の昔からこの地に湧くといわれる名湯で、1350年の歴史を誇る。658年に斉明天皇と中大兄皇子(天智天皇)が入湯したという記録が残るほか、持統天皇や文武天皇も訪れているという。江戸時代には紀州藩主時代の徳川吉宗も入湯した。
 教科書に出てくるような歴史的人物が温泉につかっていたという事実も驚きだが、しかも、男湯の一部には当時の石づくりの湯壺がそのまま残っているとされる。まさに日本屈指の歴史を誇る露天風呂なのだ。
 大昔からこの場所にあるのは、手前にある湯船だ。日本最古とされる天然の岩の湯壺は野性的で、岩場の窪地がそのまま湯船になったという風情である。
 湯船には、ほんのりとゆでたまご臭のする源泉がかけ流されている。熱めの塩化物泉で、波打ち際の温泉らしい塩味が特徴だ。海からは10mくらい離れていて波打ち際の湯船のような迫力はないが、こちらは温泉の鮮度が高く、歴史の重みも感じられる。万葉の昔から、このようなすばらしい温泉が湧き続けていることに感動すら覚える。

■ワーケーションのメッカとしても注目

 実は、南紀白浜温泉の温泉湧出については謎がある。温泉が湧き出すには、「水」「熱源」「湯の通り道」という3つの条件が欠かせない。ところが、紀伊半島には、温泉の熱源となる活火山が存在しないのだ。
 では、なぜ温泉が生成されるのかというと、地下にあるフィリピン海プレートが大陸のユーラシアプレートの下に沈み込む際にプレートから絞り出された水分がマントルの熱で温められて、温泉として湧出しているという(諸説あり)。
 なお、湯が地上に出てくるための通り道については、南紀白浜の地質は、マグマが冷却固結する際にできる「節理」でできており、その割れ目を通って温泉が湧き出すのだという。そのような話を聞くと、温泉が大地の恵みであると実感する。
 南紀白浜は、近年ワーケーションの聖地としても注目され、拠点を設ける企業も増えている。コロナ禍以前から和歌山県がワーケーションに力を入れてきたこともあるが、南国リゾートのような開放的な雰囲気も多くの人を惹きつけるのだろう。温泉に入りながらワーケーションをすれば、仕事の生産性もアップするかもしれない。

 

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