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マネジメント

第77回 『フルコンディション』

社長の右腕をつくる 人と組織を動かす

 日本を代表するあるピアニストの還暦記念リサイタルに招かれた時のこと。ステージには、彼の恩師も登場し、こう言った。
 「彼は、天才ピアニストの条件を完璧に備えた人です」。
そして、ひと呼吸おき、「その条件とは……」と言葉を続けた。 どんな言葉を思い浮かべるだろう?
繊細な感受性? すぐれた聴覚? あるいはモーツアルトように、特別に神様に愛されることだろか?

 恩師の言葉は、予想を超えたものだった。
 「ひと並はずれて、健康であることです」
 一瞬、会場には小さなどよめきが起こったが、私は誰よりも深くうなずいていた。この条件は、「結果を出す」ビジネスマンにも、そのままあてはまるものだったからだ。

 健康であることは、よい仕事をするうえで絶対に欠かせない条件である。病気では仕事ができず、論外である。体調が悪くても、よい仕事は望めない。
 人はあきれるほどもろい生き物だ。かすかな疲れが体の奥底によどんでいるだけで、どことなく落ち着かず、集中できない。いつもなら有り得ないミスをしでかしてしまったりする。
 若さを武器に、体力頼みで猛烈に仕事をこなすことができるのは、20代までとあきらめた方がよい。30代の声を聞いたら、健康に気を配らなければいけない。

 部下をもてば、部下のコンディションを管理することも上司の仕事のうちに入る。
 総務課に勤務するAさんは、6月末に開催される株主総会を目指して、毎年4月から5月末までが仕事に山になる。このときAさんが取り組むのは、部下のスケジュールづくりだ。
 「仕事の」ではない。「休みの」スケジュール配分表を作成するのだ。
 全員で、残業に継ぐ残業、休日も返上して取り組むのでは、皆がボロボロになってしまうだけで、効率は目に見えてダウンしてしまう。
 つねに充分に休養をとり、フルコンディションで仕事ができるスタッフを確保しておく方が、仕事の運びも早く、ミスの発生も防げる。

 これは、個人的にきつい仕事をこなす場合にもあてはまる戦略だ。
 適度に休むこと。そして、自分をつねにベストコンディションに保つよう努めること。これも、ロングランのビジネス生活を通じてコンスタントに好成績を残すスキルといえる。
 

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