これからの経営が目指す最先端の姿として、「ウェルビーイング経営」という言葉が広まってきました。一方、「ウェルビーイング」の言葉はさまざまな意味があり、ウェルビーイング経営の定義もはっきりとは定まっていません。そのため、いざウェルビーイング経営に取り組もうとしても、社内でどんな観点を共有したらいいのか、第一歩に悩む経営者も多いものです。
そこで、本記事では、世界規模でウェルビーイング研究を行うアメリカの企業ギャラップ社が提唱する要素をヒントに、最先端のウェルビーイング経営の5つのポイントについてご紹介します。
1 米ギャラップ社が提唱する5つのウェルビーイング
アメリカの著名な調査会社であるギャラップ社は、ウェルビーイングに関するさまざまな研究を行っていることでも知られています。国連が毎年発表する世界幸福度ランキングも、ギャラップ社が行っている調査と研究の一つです。
そのギャラップ社は、ウェルビーイングを以下の5つの要素に分解して説明しています。
① キャリア・ウェルビーイング ー仕事や人生の歩みの幸福ー
② ソーシャル・ウェルビーイング ー人間関係の幸福ー
③ ファイナンシャル・ウェルビーイング ー経済的な安定ー
④ フィジカル・ウェルビーイング ー身体的な健康ー
⑤ コミュニティ・ウェルビーイング ー属するコミュニティでの幸せー
これらの軸で考えると、組織におけるウェルビーイング経営の実行のヒントが得られます。
では、ひとつひとつの要素に沿ってヒントを探っていきましょう。
2 キャリア・ウェルビーイング
キャリア・ウェルビーイングとは、仕事を含めた人生のさまざまな経験を通じて、人が幸せな人生を体感することを指します。
人生は、仕事がすべてではないとしても、人にとって働く時間は圧倒的に長いのが事実です。寿命とともに定年も伸び、人生の労働時間はこれからも増えていく可能性が十分にあります。
経営者にとっても、働く人たちがやりがいを感じ、どんどん仕事上の能力を高めてくれるなら、それに越したことはありません。実際、ウェルビーイング経営の実践のためには、社員ひとりひとりがどんなキャリアを築いていくのかに経営者側が注意を向け、ひとりひとりがその能力を十分に高められるように、キャリア成長の機会を提供することがカギとなります。
3 キャリア・ウェルビーイングとリスキリングの関係
なお、日本では海外に比べて成人教育があまり発達してきませんでした。大学を卒業するとすぐに就職し、自分の与えられた仕事をすることだけが成長の機会、そのまま終身雇用でキャリアを終える、という流れが一般的だったからです。
しかし、これからはリスキルの時代です。驚くほどの速さで変わっていく社会で企業が成長を続けるためには、そこで働く人たちに、その変化に対応できる能力を身に着けてもらい、それを事業に活かすしかありません。そのためには、企業は自社の社員の能力をどんどん開発し、時には、外部の研修やリスキルの学習機会を利用しながら、キャリアを育てていく姿勢が不可欠です。このような姿勢によって社員が多角的に成長し、それと共に事業も持続的に成長していくことが期待できます。
具体的には、
・中長期的なキャリア形成を意識した人事制度や手上げ制度の導入
・社内でキャリアコンサルティングの時間を半年に一度設定する
・新しい技術を社外で学習する際の受講費用に補助を出す
・社員同士が、自分の得意分野を社内で講習する機会を設ける
・就業時間の何割かを現在の担当業務とは直接関係のない部門のスキルの習得に充てる
などが考えられます。