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マネジメント

第7回 組織を変えるより、まず「自分の関わり方」を変える

ピョートル・F・グジバチの『経営戦略の新常識』

 「何度も改革を試みたのに、現場が受け身で動かない」「新しい制度を導入しても、結局は形骸化してしまう」────こうした停滞は、社員の意識や能力の問題ではありません。その真の原因は、経営者自身の無意識の思考と行動パターンにあることが多いのです。

 忘れてはなりません。組織は、経営者の言葉や判断、日々の振る舞いを映す『鏡』です。

 会社を本質的に変えたいなら、変えるべきは「仕組み」ではなく、経営者自身の関わり方です。

 今回は、自己変革を起点に、停滞した組織を再び動かし、成長軌道へ導くための実践手法を紹介します。

 

この記事のポイント

1.組織停滞の原因は「社員の抵抗」ではなく、経営者の無意識の行動パターンにある

2.経営者が自らの「関わり方(反応)」を変えると、組織の意識と成果は連動して変わる

3.最も効果的な自己変革の出発点は、「努力」よりも「気づき」である

 

「頑張るほど悪化する」経営の逆説

 多くの経営者は、問題が起きると「自分がもっと頑張れば解決できる」と考えます。売上が伸びないから会議を増やす。社員が動かないから細かく指示を出す。

 しかし、この善意の努力が、かえって組織の自律性を奪い、成長を止めてしまうことがあります。

 ある製造業の社長は、毎朝現場で細かく指示を出していました。当初は士気が上がりましたが、半年後には「社長がいないと何も決められない」組織に。

 経営者の関与が深まるほど、社員は自ら考えなくなる────これが〝頑張るほど悪化する〟典型例です。

 同じやり方を「もっと頑張る」だけでは結果は変わりません。必要なのは、努力の量ではなく、関わり方の前提を変えること。変革は、経営者自身が「自分の関わり方が、どんな社員の行動を生み出しているか」を問い直すことから始まります。

経営者の行動 社員に伝わるメッセージ 結果
提案にすぐ助言する 「自分で深く考えなくていい」 依存体質の定着
失敗時に厳しい態度をとる 「リスクは報告しない方が安全」 情報の隠蔽
挑戦に細かく口を出す 「どうせ社長の意見になる」 主体性の喪失

 こうした日常のやり取りが積み重なり、組織の空気を決めていきます。経営者の「関わり方」そのものが、組織の行動パターンを形づくるのです。

 社員が変わらないと感じたときこそ、

「自分の言葉や態度が、社員のどんな反応を引き出しているか?」と自問してみてください。

 それが、組織を変えるための最も即効性のあるスタート地点です。

 

「気づき」こそ、行動を変える最短ルート

 変化を生み出すのは「努力」ではなく、自分の無意識への気づきです。

 社員の報告を聞くと反射的にアドバイスを始めてしまう。業績の話になると、無意識に声が強くなる。このような違和感の観察こそが、次の行動を変えるトリガーになります。

 たとえば、「今日は最後まで口を出さず、沈黙を恐れずに聞く」と決めるだけでも、社員は自ら考え始めます。気づきは、最も実践的で低コストなマネジメント手法です。

 

経営者のための実践ステップ:自己変革を始める3つの方法

ステップ1:自分の行動パターンを「見える化」する

 1週間のうち、うまくいかなかった場面を3つ書き出しましょう。「なぜ失敗したか」ではなく、「自分がどう反応したか」に注目します。同じ反射的行動を繰り返していないかを見抜くことが、変化の第一歩です。

記録例
・状況:社員が新規提案をしてきた
・自分の反応:2分で「それは難しい」と却下
・気づき:可能性を探る前に、リスクを語っている

ステップ2:あえて「逆の行動」を試す

 普段はすぐ口を出す場面で、あえて黙る。助言の代わりに「あなたならどう解決したい?」と聞く。この“逆の一手”が、社員の主体性を引き出します。

試してみたい「逆の行動」リスト
・会議で最初の10分間、一切発言しない
・報告を受けたら、助言の前に「どう思う?」と聞く
・失敗の報告に「次はどうする?」とだけ返す

ステップ3:第三者の「鏡」を持つ

 自分の行動パターンは、自分では見えにくいものです。信頼できる社外の仲間、コーチ、顧問など、第三者の視点を取り入れましょう。外部の鏡が、凝り固まった思考をリセットし、新しい判断を生み出します。

 

経営者が変わると、組織は必ず動き出す

 特別な施策は必要ありません。小さな関わり方の変化が、組織のパフォーマンスを大きく変えます。

 ある製造業では、社長が会議での発言時間を「半分」に減らしました。3か月後、社員からの提案件数は月5件から20件に増加。会議が「報告の場」から「創造の場」に変わり、結果として新規案件の成約率が15%向上。四半期売上は前年比12%増となりました。

 また、サービス業では、経営者が面談の目的を「評価」から「学びの対話」に変えた結果、離職率が20%から8%に減少。採用・育成コストが年間800万円改善しました。

 共通するのは、経営者が自分の関わり方を変えたこと。

 行動を変えれば、文化が変わり、結果が変わる。

 これこそが、変化を生み出す真のリーダーシップです。

【まとめ】経営の変革は、今日の一つの「気づき」から

 組織が動かないとき、最初に変えるべきは「仕組み」でも「社員」でもありません。経営者自身の関わり方です。「もっと頑張る」という精神論ではなく、「自分の反射的な反応を一つ変える」という具体的な行動に焦点を当てましょう。

 変化の第一歩は、努力ではなく気づき。その気づきが、経営者の在り方を変え、組織の未来を変えます。今日、あなたの関わり方を一つだけ意識的に変えてみてください。その瞬間から、組織はすでに動き始めています。

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