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第55回
若者や外国人観光客の「盆おどらー」が増殖中!?
~「お盆」と「盆踊り」のルーツを知ろう~

次の売れ筋をつかむ術

 
 
夏と言えば「お盆」、そして、日本の夏の風物詩と言えば「盆踊り」である。
 
近頃、若者や外国人観光客の間で、全国各地の盆踊りを転戦(転踊?)する
盆踊り好きの「盆おどらー」が増殖している。
 
しかし、「お盆」とは、本来、何なのか、そして、「盆踊り」のルーツは何かと言えば、
何となくわかっているつもりの人が多いが、意外と知られていない。
 
以下、「お盆」の本来の意味と、新たにブレイクしつつある古くて新しい
「盆踊り」ムーブメントについてレポートしよう!
 
◆「お盆」の本来の意味は「逆さ吊り」?
 
お盆休みに、親や子や孫の顔を見るのを楽しみにしている人も多いだろう。
 
お盆とは、仏教では正式には「盂蘭盆会」(うらぼんえ)と呼ばれる行事だ。
 
元来は、梵語(サンスクリット語)で、逆さ吊りを意味をする
「ウラバンナ」という言葉を漢字で音写したもので、
逆さまに吊り下げられるような苦しみにあっている肉親を救う法要という意味である。

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この行事は、釈迦の弟子の一人、目連尊者(もくれんそんじゃ)が母を救う話に由来している。
 
尊者は、ある時、神通力によって、亡き母が餓鬼道に落ち逆さ吊りにされて苦しんでいることを知る。
 
そこで、どうしたら母を救えるか釈迦に相談したところ、釈迦は、
 「夏の修行が終った7月15日(旧暦)に僧侶を招き、
  多くの供物をささげて供養すれば母を救うことが出来るであろう」
と答えた。
 
尊者が教えに従って法要を行ったところ、その功徳で母は極楽往生が遂げられた。
 
この神話に倣い、お盆は、父母や先祖に報恩・感謝を捧げ、供養を積む日となったのだ。
 
わが国では、甥の聖徳太子に政務を摂政させた、日本初、東アジア初の女帝であった推古天皇が、
606年に斎会(さいえ)を設けたのが初めだとされる。
 
◆「お盆」が7月15日と8月15日の地域があるのはなぜ?
 
一般的に、お盆とは、7月15日頃に祖先の霊を祀る一連の行事を意味する。
 
主に仏教の行事と認識されているが、実際には仏教の教義だけでは説明できない部分もある。
 
おそらくは、各地に伝わっていた古神道による先祖供養の儀式や神事を、
江戸幕府が庶民に勧めた檀家制度から仏教式で行うことが広まり、
仏教行事の「盂蘭盆」と習合して現在の形になったと考えられる。
 
盆とは、文字どおり、先祖の霊に対する供物を置く盆(容器)の意味とも重なる。

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明治以前は、日本の多くの地域で、旧暦の7月15日を中心に、13日に迎え盆、16日に送り盆を行っていた。
 
しかし、現在は、8月15日を中心に一月遅れでお盆を行う地方も多い。
 
これは、明治になって旧暦が廃され新暦が採用されたものの、新暦の7月15日では、
当時、国民の8割を占めていた農家の人々にとっては繁忙期と重なってしまい都合が悪かったからだ。
 
そこで、お盆を一月遅らせ、ゆっくりとご先祖の供養ができるようにしたのだ。
 
◆「盆踊り」は人々の娯楽であり人々の絆を強める「コミュニティ維持装置」

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古くからお盆の時期に全国津々浦々で行われて来た「盆踊り」は、
本来は亡くなった方を供養するために家族や地域で踊るものだが、
現在では宗教的意味合いは薄まり、多くの場合、庶民の娯楽となっている。
 
明治時代に衰退する地域も増えたが、大正末期から農村の娯楽として奨励されはじめ、
再び盛んになって行った。その後も、震災や戦災で途絶えるところもあったが、
地域の人々の努力によって各地で受け継がれている。
 
「盆踊り」は、町や村の人々の娯楽であるとともに、
地域の人々の絆を強める役割を果たして来た「コミュニティ維持装置」だ。
 
そのため、ご当地音頭も数多く存在する。
また、もともと盆踊りがなかった地でも自治体や商工会議所、商工会、青年会議所などが
新作したオリジナル音頭も増えている。
 
盆踊りには、大きく分けて、誰でも踊りに参加できる「参加型」と、
主に観客に見せるために限定された踊り手が踊る「鑑賞型」がある。
中には、その両方の形式を持っている地域もある。
 
前者は、広場の中央にやぐらを立て、やぐらの周囲を回りながら音頭にあわせて踊る形式が一般的だ。

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盆踊りの伴奏音楽としていくつもの楽曲が奏される。
昨今は録音された音頭を再生して行なうことが主流になっている。
 
◆盆踊りにハマる若者と外国人観光客の「盆おどらー」が増加中!
 
近年、「盆踊り」にハマって、踊りが趣味となり、
各地の盆踊りを転戦(転踊?)する老若男女の「盆おどらー」が増えている。
 
特に若者の「盆おどらー」が急増している。その背景には、高知市の「よさこい祭り」に端を発する、
1990年代に北海道札幌市の「YOSAKOIソーラン祭り」が成功を収め、
そのノウハウを元に2000年代にかけて全国各地に広がった「YOSAKOI(よさこい)系祭り」の流行がある。

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「YOSAKOI(よさこい)系祭り」は、今や全国各地に200~400カ所以上で開催され、
若い世代を中心に数千万人もの参加者がいる。
 
和の踊りの楽しさと、多くの人達の喝采を浴びながら公道で踊る喜びと高揚感を知ってしまうと、
踊れる場を求めて、各地の盆踊りに参加したくなるのは当然だ。
 
それらの「YOSAKOI(よさこい)系」踊りの元祖である高知市の「よさこい祭り」

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とは、
日本最大級の盆踊りである徳島県の「阿波おどり」

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に対抗して、それをモデルに創作されたものだ。
 
自分が踊っていた踊りのルーツが実は身近な盆踊りにあることを知り、
そこから盆踊り道を極めようと、盆踊りをライフワークとする「盆踊り求道家」となる人も少なくない。
 
また、「お盆」も「盆踊り」も元来は宗教的な行事だが、近年、若者の間で
スピリチュアルなことへの関心が高まっていることも追い風になっている。
 
一方、海外から日本を訪れるインバウンド観光客の数は1300万人を超え、さらに増える勢いだが、
外国人観光客に、見ても楽しく参加しても楽しい「盆踊り」は大人気で、
各地で外国人「盆おどらー」を呼び込む観光コンテンツとしても活用されつつある。

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「阿波おどり」の掛け声通り、「踊る阿呆(あほう)に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らな損々」。
 
さあ、踊りに出かけよう!
 
 

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