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第99回 「戦後最長の景気拡大」はいつまで続くのか?
~上だけを照らす《天照らす景気》の行方を読む~

次の売れ筋をつかむ術

●社会の上部だけを照らす《天照らす景気》
2012年(平成24年)12月に始まった現在の景気拡大局面が「いざなぎ景気」を超え、戦後最長を更新中だ。
「いざなぎ景気」は、1965年(昭和40年)11月から1970年(昭和45年)7月までの57か月間続いた高度経済成長時代の好景気だったが、平成時代後半に始まった今回の景気拡大は80か月に迫る勢いである。
戦後最長を更新などといっても、個人や中小企業、地方で実感している人は少ない。
NHKによる調査でも、「戦後最長の景気拡大」を実感できている人は、国民の1割未満にとどまる。
景気が拡大しているとは言っても力強さに欠けるし、日銀のインフレ(物価上昇)目標の2%も達成できず、いつまで経ってデフレを脱却できていない。
格差の拡大が懸念されて久しいが、所有する株式や不動産が値上がりした一握りの富裕層だけが潤っているとの指摘もある。
「神武景気」の際にも同様に例えられたが、今回の景気拡大は社会のヒエラルキーの上部を照らしただけなので、私は《天照らす景気》と呼んでいる。
しかしながら、平成の前半と比べれば、明らかに株価も地価も上昇した。
2019年1月の完全失業率は2.5%で、どの地域もどの業界も超人手不足に陥っている。
お隣の韓国では2019年1月の失業率は4.5%と金融危機後の2010年以降、月ベースで9年ぶりの低水準となっているし、中国も米中経済摩擦のあおりを受け、2018年12月末の失業率は4.9%に上る。
韓国や中国では大学を出ても就職口が見つからない状況で、それに比べれば、日本は恵まれているとも言える。
●「戦後最長の景気拡大」はいつまで続くのか?
はたして、この《天照らす景気》は、いつまで続くのだろうか?
今後のカレンダーを見れば、平成から新たな時代に改元する2019年は、秋に消費税増税が予定されているものの、初のゴールデンウイーク10連休、ラグビーワールドカップがある。
2020年には、東京オリンピック・パラリンピックが催される。
2025年には、大阪万博の開催も決定した。
2016年のIR(Integrated Resort=統合型リゾート)法案の成立を受けて、2024年頃以降、全国3か所に初のIR施設が開業する見込みだ。
2027年には、リニア中央新幹線の品川~名古屋の開業を目指している。
「オリンピック後があぶない」、「いや、オリンピック前にはもう崩壊しているだろう」、「不動産は既にピークを過ぎた」、「関西は万博の後が心配」、「米中摩擦の行方次第」などと、皆、戦々恐々としている。
●りゅうじんが読む景気後退の時期と落差
りゅうじん流の読みとしては、今回の《天照らす景気》が、もともと、地域や業種、企業や個人によって、良かったり悪かったりと「まだら模様」であるように、景気後退の時期やその落差も「まだら模様」に現出すると考えている。
つまり、世界や日本全体のマクロの経済指標に一喜一憂するのではなく、地域や業種、企業や個人が、おのおの自分自身で、変化の予兆を感じ取り、早めに手を打つしかないと思われる。
既に26年前の1993年に “バブル・シーラカンス”と雑誌で揶揄されたが、在学中に起業して以来30余年。私のような者が何とか赤字の年なく生かしていただいて来たのも、常に自らの足で歩き回って感じた変化に従って来たからに他ならない。
●この世で生き残る生き物は何か?
変化をとらえることの重要性は言うまでもない。
ライフサイクルと言うように、個人も企業も地域も商品もサービスも生き物だ。
小泉進次郎氏の父・小泉純一郎氏が首相の時に施政方針演説で述べたダーウィンの言葉を覚えておられるだろうか?
その言葉は、2001年に小泉氏の後援会に講師としてお招きいただいた際に「変化はチャンス!」~変化を活かすビジネス戦略~と題して講演した際にレジュメに書いたものだ。
これに小泉氏が着目。講演終了後、当時の飯島勲秘書官から電話をいただき、施政方針演説に使われた。
進化論を唱えたダーウィンは述べている。
この世で生き残る生き物は何か?
一番強いヤツか?頭のいいヤツか?
いや違う。変化に対応できる生き物だ。
●大恐慌の前に株を売り払ったケネディの父
バブル崩壊を予見し、難を逃れた有名な逸話をご紹介しよう。
ジョン・F・ケネディ大統領の父、ジョセフ・P・ケネディは、その当時、ヨーロッパからアメリカに渡って来た移民の中では下層のカトリック教徒のアイルランド系だったにもかかわらず、一代で財を成し、ケネディ王朝の礎を築いた立志伝中の人物だ。
ジョセフ・P・ケネディは、1929年に始まった世界大恐慌の大暴落の前に、すべての株を売り払って難を逃れた。
ある日、彼がウォール街の街頭で靴を磨いてもらっていた時、靴磨きの少年から、「おじさん、あの株は上がると思う?」と聞かれた。
「こんな少年まで株式投資の話をしているとは、そろそろ危ないな」と思い、株をすべて売ったのだと伝わる。
一説では、この逸話は彼の作り話で、実際にはパトロンの一人だったガイ・カリアの忠告に従ったのだとも言われる。
しかし、そういった皮膚感覚、嗅覚を持っていたからこそ、大多数がバブル崩壊から逃げ遅れ、財産を失ったにもかかわらず、事前に売却を決断できたのに違いない。
●「“もう”は“まだ”、“まだ”は“もう”」
多くの人達は景気回復の実感が得られないまま、「どうなるんだろう?」と様子見の状態に違いない。
それがいつまで続くかは、「“もう”は“まだ”、“まだ”は“もう”」で判断すべきだ。
年末に、ある不動産業者が「値上がりも“もう”限界だろう」と言うのを聞いた。
それは“まだ”正気な証拠だ。そう言っている間は“まだ”続く。
しかし、先日、「大手がそんな値段で買うからには“まだ”大丈夫だろう」という話を耳にした。
そんな風に“まだ”続くと皆が思い出したら“もう”限界が近いということだ。
●原点回帰の《3ない経営》のススメ
本来、経営とは景気に左右されてはならない。周囲がいかにバブっていても、「浮利を追わず」、原点を忘れないことが肝要である。
私自身自分を戒めるために、平成に続く新たな時代は、《3ない》を旨とする決意だ。
《3ない》とは、「媚びない」「ブレない」「飽きない」である。
「AIだIoTだ」、「次はIRだ」などと、何でもかんでもダボハゼのように食らい付けば大ケガをしかねない。
簡単に売れないからこそ〈媚びない〉営業が大切だ。
お客様は神様ではない。お客様は王様だ。裸の王様もいれば、あぶない王様もいる。良い客が良い客を呼ぶのである。
また、「屏風は広げ過ぎても倒れる。狭め過ぎても倒れる」。
自社の存在意義は何か?オンリーワンのコア・コンピタンス(核となる競争力)は何か?
〈ブレない〉理念を持ち、持ち続けねばならない。
そして、利を求めるばかりに安易に事業を拡大してはならない。
日々愚直に〈飽きない〉仕事を心掛けたい。
景気がどうであろうが、お客様が飽きない商いを飽くことなく続けることこそが生き残るすべに違いない。

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