近年、仕事でもプライベートでも、パソコン、タブレット、スマートフォンは必須アイテムとなり、テレビも含めると、1日に数時間以上、光る画面を見るライフスタイルが定着しました。目に疲れを感じる方も多いのではないでしょうか?
そんな中、問題視され始めたのが「ブルーライト」です。近年、「ブルーライト」の軽減を目的としたPC用メガネが注目を集めるほか、2013年には、慶應義塾大学医学部眼科教授で医学博士の坪田一男氏が代表を務める「ブルーライト研究会」が、日本で「第1回国際ブルーライトシンポジウム」を開催するなど、科学的な研究も進みつつあります。
ブルーライトとは「青色の光」で、波長としては380~495nmに相当し、ヒトの目で見ることのできる光(=可視光線)としては最も波長が短く、角膜や水晶体で吸収されずに網膜まで到達すると言われています。その結果、目の疲れや網膜へのダメージによる視力の低下(加齢黄斑変性)などの直接障害に加え、サーカディアンリズム(1日を単位とする生物の生活リズム)への影響による睡眠や精神への悪影響も懸念されているのです。
経営者にとっては、自身と社員の健康や生産性に関わる重要なテーマとして、今から「ブルーライト」の低減に先手を打っておくべきでしょう。
今回は、パソコン、タブレット、スマホ、テレビで、今すぐ手軽にできる「ブルーライト緩和術」をご紹介します。
なぜ今、「ブルーライト」なのか?
「青い光なんて、そんなに見ないけど」とか、「テレビは何十年も見ているけど、特に問題ない」など、「ブルーライト」に対する危機感は薄いかもしれません。しかし、ここ最近は、特別な変化が起こっています。光源のLED化です。LED自体は低消費電力で明るく照らせる優れた技術ですが、液晶ディスプレイのバックライトに使用されている白色LEDの殆どは、発光効率の高い「青色」を発するLEDに、黄色の蛍光体を組み合わせています。言い換えると、LEDの光は、青色成分を多く含んでいるのです。
【図1】
さらに、我々が見ている液晶ディスプレイの白色は、青色+緑色+赤色の加法混色によるもので、太陽光や白熱灯の白色に比べると、光の成分に偏りがあり、特に青色のエネルギーが大きいのが特徴です。【図1】は、代表的なスマートフォンで白色を表示部し、スペクトル(光の成分)を測定した結果です。青色が針のように鋭く尖っているのがお分かり頂けるでしょう。白色と思っていても、実は、刺激の強い青色を大量に含んでいるのです。
ブルーライト対策術
ブルーライトと健康との因果関係は未だ明らかにされておらず、過大な投資も難しい状況ながら、できる限りのブルーライト低減に努めるのは、社員の健康予防対策やリスク低減の観点から有用でしょう。また、「ブルーライト」の低減を目的としたPC用メガネの装着も一案ですが、視力矯正用メガネ利用者や外出時には使い難い面もあります。
ここでは、費用が掛からず、今すぐ手軽に始められる対策術をご紹介します。基本は、画面輝度の適正化と、色味の暖色化です。画面の輝度低下で青色を含む光刺激の低下を、色味の暖色化で青色成分の低減に繋がります。
■デスクトップパソコン編
【PCモニターの調整画面例】
モニターには輝度(明るさ)と色味の調整機能(色温度)が備わっています。
「輝度」は必要最小限に。画面の白い部分がグレーに見えない程度まで下げましょう。白い部分がグレーに見えると、暗すぎて作業に支障をきたします。
色味は「色温度」の調整項目がある場合、事務系なら「6500K」を選択しましょう。さらに暖色の「5000K」を選択すると、より青色成分が低減しますが、黄味が強くなり、本来の色調とは異なって表示される可能性があります。
「RGB」で調整する場合、B(青色) とG(緑色)を減らし、暖色に整えます。白の色味が大きく赤色や緑色を帯びる際は、G(緑色)を調整してバランスを取ってください。
■ノートパソコン編
【ノートPCの画面の明るさは、ファンクションキーで調整可能】
移動して使用するノートパソコンは、周囲の明るさとの調和が大切です。「輝度」は、キーボード上のキーで簡単に調整可能で、周囲の明るさに応じて、画面の白い部分がグレーに見えない程度まで暗く調整しましょう。
色味は、例えばWindows7なら、「コントロールパネル」→「ディスプレイ」→「色の調整」で、画面の指示に従って作業を進め、「カラーバランスの調整」で、B(青色)とG(緑色)を減らし、暖色に整えます。白の色味が大きく赤色や緑色を帯びないようにバランスを取ってください。
■タブレット・スマホ編(Android端末)
色味はアプリで調整が可能です。「ブルーライト」をキーワードに検索すると、無償のアプリも幾つか見つかります。お薦めは、「ブルーライト軽減フィルター」。無償で基本画面からアプリの画面まで、全てに適用でき、暖色の度合いもお好みで選べます。
【アプリ「ブルーライト軽減フィルター」の画面例】
輝度の調整は、自動調光機能を活用すると良いでしょう。殆どのタブレットやスマートフォンには、周囲の環境光の明るさ応じて、自動で画面の明るさを調整する機能が備わっています。
■テレビ編
テレビには映像調整機能が備わっており、画面輝度や色味は、リモコンで調整が可能です。画面の輝度は、項目のうち「バックライト」(一部のメーカーで呼称が異なる)で調整します。画面の白い部分がグレーに見えない程度まで暗く調整しましょう。暗く設定すると、省エネにも繋がります。
色味は、項目「色温度」で調整します。「低」が暖色です。部屋の照明が昼光色や昼白色(白~青白)の蛍光灯の場合、テレビの色温度設定が「低」では、相対的に黄味を強く感じる可能性があります。気になる場合は、テレビの色温度設定を「低-中」など、一段高く青寄りに調整しましょう。あるいは、部屋の照明を暖色(電球色)に変更するのも一案です。
なお、大手メーカーのテレビには、照明の明るさに応じて画面の明るさを自動で調整する機能が標準的に備わっています。照明色に合わせて、違和感の無いよう、色味を自動で調整してくれる製品もあります。取扱説明書を参照して、これらの機能を活用しましょう。
【テレビの「バックライト」と「色温度」の設定画面例】
さいごに
将来、ブルーライトは有害と判断されれば、映像表示装置が改良される事になるでしょう。例えば、現在の光の三原色を利用した、RGBの加法混色による白色表示を改め、1画素を「RGB+シアン」で構成すれば、白色表示時に青色(ブルーライト)成分を低減することも可能なはずです。現時点でブルーライトは有害と結論が出た訳ではありませんが、今回ご紹介したブルーライト低減策は、費用もかからず今すぐ実行できるものばかりです。社員の健康対策、問題予防に是非ご活用ください!
鴻池賢三