日本では野草は山菜として季節の素材と認識されがちであるが、フランスの料理人が活用するのは、その辺に生えているおいしく食べることができ、周年、“自生している草”を示す。例えば、イラクサ、オオバコ、コンフリー、タンポポ、カタバミ、ドクダミ、ミントなどだ。
野草はビタミンが豊富なのはもちろん、タンパク質も豊富だ。よく植物には必須アミノ酸がないというが、野草はそうではない。 草を食べてあれだけ大きくなる象を見ればわかる。
野菜と野草の決定的な差は野草のタンパク質の圧倒的な多さと野菜の水分量の多さだろう。
野菜は野草を安定供給や商業ベースにのせる意図もあり品種改良を繰り返すわけだが、タンパク質が激減させてしまい、その一方で水分を増やし肥大化させた面は否めない。
この栄養的な価値と、レストランの理念的で個性的な食材活用という面があり、星付きレストランのシェフに野草が受け入れられたと言えよう。
彼は、人口爆発を解決する手法として、人間の健康のために野草が有用だと考え、グランシェフを啓蒙して、料理をしながら野草の活用をするための体験型のオーベルジュを1980年代後半に始めた。山の中で自分で草を積んで、料理をして、自分で食べるワークショップ型の宿泊施設付きのレストランだ。フランソワのバレームのワークショップは、フランス人向けには春と夏開催される。ここにこぞって、星を目指すクイジニエが集まる。日本人向けには二年に一度夏開催されるので、幻のワークショップと言えよう。
最初の登りがきつく、その上雷雨の気配があった。20分くらい歩くとフランソワの土地と、国の所有する森のエリアとの境目に来た。
さらに上に進むと、標高1300メーターの地点となり、高山植物でサボテンのような多肉植物が生息していた。
そこにラベンダーもある。タイムもいろいろなタイムがある。タイムは品種というより、生えているところで違う香りを放つのが特徴で、このエリアのタイムもレモンのような爽やかな香りのものや、タイムらしいきつい香りのものもある。
さらにしばらく進むと、「ずぶ濡れになるのが嫌なら、引き返すことができる」と、アシスタントの今村桂子さんが参加者に問いかけた。いろいろ考えもあったが、せっかくだから続けることにした。皆、昨日の疲れもあり、ここで引き返したかったと思うが、この選択はとてもよかった。
さらに坂を上がると、今度は急な下り坂だ。そして、渓流の川辺に出た。その川を石伝いにわたり、反対側を再びのぼり始めた。
坂を登り詰めると、川沿いの草原に辿り着いた。フランソワはその場所でランチを考えていたが、先約がいた。フランソワ曰く、30年間で人とすれ違ったことが無かったというから、驚きだ。場所を変えてランチをすることにした。
ランチの後、休息をとり、このエリアにある野ばらや野草や、この場所にかつてあった村の悲しい話をフランソワから聞いた。途中で、フランソワがラベンダーの話をした。バレームのラベンダーはAOC(原産地呼称)になっていて、これだけ香りのいい品種はこれしかなく、香水の原料として使われてきたのはかつてはバレームのAOCだった。
“ラベンダー”と一般に言われているのはこのバレームのAOCとは他の品種で、50種類くらいあるが、品種改良された栽培品種であり、これらを総称して“ラボンドン”と言う。
見分け方は葉が細長いこと、花が対になっていること、そして香りである。
帰り道は体力的に大変だったが、なんとか戻れた。でも、くたくただ。そして、ロッジにつくと、激しい嵐になった。我々の運は悪くなかったようだ。
フランスHautOurgeasF-04330Barreme
電話 33(0)49234252
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