menu

経営者のための最新情報

実務家・専門家
”声””文字”のコラムを毎週更新!

文字の大きさ

サービス

76軒目 札幌ラーメン対決

大久保一彦の“流行る”お店の仕組みづくり

 景気が悪くなるとB級グルメブームが来る。リーマンショック以降、ラーメン店は増えて2011年の震災以降、競争はし烈さを増した。今はある意味少し下火の時期と言えるだろう。しかし、もともと市場規模があるラーメン。コンビニエンスストアや牛丼店に日常的な食事というマーケットを奪われたラーメン・餃子店は1983年に7399店舗あったが、今や4799店舗になった。消費税増税後、激安特集がテレビ番組で散見するようになったが、そういう状況下では再び、脚光を浴びるに違いない。 今回は札幌ラーメンを見ながら、ラーメンの行く末を占おう。
 
 札幌ラーメンというと味噌のイメージがあると思う。しかし、味噌ラーメンの歴史は1955年に『味の三平』で提供されたのが始まりで浅い。札幌ラーメンの味噌は1980年代、『すみれ』が新横浜のラーメン博物館の出店で脚光を浴び、全国区になったと言われる。
 札幌ラーメンの味噌は、味噌汁の延長線上にあり、中華コンロで中華鍋にラードを入れて熱して、玉ねぎ、もやしを炒め、スープを入れて味噌ダレを入れるシンプルなものだ。今回は、札幌ラーメンの人気店のお話しをしよう。
 
 人通りがないすすきの路地に小さな店だがつねに行列ができる店がある。『けやき すすきの本店』だ。札幌ラーメンというともやしと玉ねぎのイメージだが、青みのある野菜を使い見た目の鮮やかさと野菜とメンマの食感が印象的だ。少し脂っぽさはあるがインパクトがある。観光客にはこと人気があるようで、商品設計とマーケティングの勝利なのかもしれない。
 
shikumi76_01.jpg
 
 昔ながらの札幌味噌を提供するのが『ラーメン寶龍』だ。シンプル故、ブレも出やすいタイプのラーメンであるが、飽きのこない昔ながらのラーメンでおいしい。
 
shikumi76_02.jpg

 そんな歴史ある味噌ラーメンだが、最近は個性化している、なかでも海老ラーメンのカテゴリーを築いた『えびそば一幻総本店』は個性的だ。店内に入ると海老の匂いが充満している。塩、しょうゆ、味噌と品揃えをして、“ほどほど”、“まろやか”、“そのまま”と海老の濃度(印象)をチョイスでき、バリエーションを出していて工夫している。個性的でありながらも、むしろ品揃え感がしっかりある。
 
shikumi76_03.jpg

 スパイシーな『?部屋 綱取物語』は札幌味噌と言えるかは別として、スパイシーで個性的だ。
 
shikumi76_04.jpg

 オペレーションの変化も進んでいる。『?屋雪風 すすきの本店』はすすきので深夜だけ営業で、しばらく食べログで最高点数に君臨していたが、狸小路に新店を出した。その店では中間コンロと中華鍋を使わず、雪平鍋で安定したラーメンを提供している。
 
shikumi76_05.jpg
 
 私がおすすめなのが、実は醤油である。醤油は味噌が生まれる前の札幌ラーメンと言えるだろう。もやしをラードで炒めて、醤油のタレを入れた、味噌ラーメンが生まれる以前のレトロな店内でラーメンを提供するのが、『福来軒本店』である。木造のこの店を見て初めてならはっきり言って驚くだろう。しかし、そのラーメンは醤油の香りがとても印象的でうまい。
 
shikumi76_06.jpg

 『さっぽろ純連 札幌本店』にも醤油がある。少し、ガス口に放置して煮詰めるのがポイントだ。こちらもうまい。
 
shikumi76_07.jpg

 他の店でも醤油を食べたが、意外と醤油は難しいようだ。火力の強い中華コンロであつあつの中華鍋に醤油を入れるため、苦味が出てしまうからだ。現実問題、「これはだめだ」と食べるのを諦めたこともあるくらいの店もあった。その点、味噌は、壊滅的な失敗が少ないラーメンと言えるだろう。
 
 最近は、地元では、とんこつラーメンなど違うカテゴリーに札幌味噌ラーメンも押されがちのようだ。汁なし担担麺の店もできている。
 
shikumi76_08.jpg

 札幌味噌はシンプルなラーメンゆえ飽きが来ない面があるが、東京のブリックスも味付けも濃いラーメンを食べた人が札幌で食べると期待外れと思うことがあるかもしれない。ラーメンの価値観は多様だということで、レジャーとして楽しんでいただきたい。成熟したラーメン市場において食べ歩きの味なのか繰り返し来店する味なのか、自分の店を見極めその違いをどうだすかがポイントとなるだろう。
 
 
けやき すすきの本店
北海道札幌市中央区南六条西3 睦ビル 1F
電話 011-552-4601
→食べログ内ページ
 
 
ラーメンの寶龍(ほうりゅう) 総本店
北海道札幌市中央区南六条西3
電話 050-5872-4351
→食べログ内ページ
 
 
えびそば一幻(いちげん) 総本店
北海道札幌市中央区南7条西9丁目1024-10
電話 011-513-0098
→食べログ内ページ
 
 
麺部屋 綱取物語 菊水店
北海道札幌市白石区菊水3条3丁目2-15 ユーエイコーポラス 1F
電話 011-815-8356
→食べログ内ページ
 
 
麺屋 雪風(ゆきかぜ) すすきの本店
北海道札幌市中央区南七条西4-2-6 LC拾壱番館 1F
電話 011-512-3022
→食べログ内ページ
 
 
福来軒(ふくらいけん) 本店
北海道札幌市中央区南十六条西8-1-26
電話 011-521-5407
→食べログ内ページ
 
 
さっぽろ純連(じゅんれん) 札幌本店
北海道札幌市豊平区平岸二条17丁目1-41
電話 011-842-2844
→食べログ内ページ

 

75軒目 新祇園名物の肉割烹前のページ

77軒目 これからのテロワールは野草で表現せよ!次のページ

関連記事

  1. 3軒目 「観光の目玉になるレストラン」

  2. 118軒目 《富山のテロワールを存分に味わえる》レヴォ (L’evo)@富山市

  3. 86軒目 福岡県飯塚市の凄い焼肉店

最新の経営コラム

  1. 第151回 高音質なコンデンサーマイクでニュアンスまでも伝える!

  2. 第146回『仕事と人生にドラマを生み出す感動知性』(著:平野秀典)

  3. 第178話 モノ、カネ、ヒトの「中国離れ」をどう食い止めるか?

ランキング

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10

新着情報メール

日本経営合理化協会では経営コラムや教材の最新情報をいち早くお届けするメールマガジンを発信しております。ご希望の方は下記よりご登録下さい。

emailメールマガジン登録する

新着情報

  1. 教養

    第25回 『あかんやつら ~東映京都撮影所血風録』(著:春日太一)
  2. マネジメント

    第98回 「眠り方改革」は進んでいるか?
  3. マネジメント

    挑戦の決断(24) 富国強兵のため手段を選ばず(山県有朋)
  4. 経済・株式・資産

    第119回「実店舗誘導型のネット広告に特化して高成長を遂げる」マイクロアド
  5. ブランド

    <事例―14 一休(B2C)>あえて上質な企業と顧客を狙った・・それが一休だ
keyboard_arrow_up