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- 第79回「中国の個人投資家の失敗から得る教訓」」
中国の上海市場の株価が、過去1年足らずの間に約2.5倍に上昇(総合指数6月12日5166)した後、一転して6月中旬から4週間で30%超も急落(7月8日3507)して、世界の金融市場にショックが走った。当局が、なりふり構わぬ株価支援策を繰り出しているが、実体経済の減速が鮮明になってきただけに今後の動向は予断を許さない。
今回の急落は、実体経済や企業業績から説明できない水準にまで株価が上昇していたところへ、経済の減速を懸念した売り物がまとまって出たことから、「売りが売りを呼ぶ展開」になったものだ。しかし、そこには上海の株式市場に特有の問題がある。市場参加者の約8割が個人投資家で、それも今回の株価急騰の相場を見てから口座開設した投資初心者が多いという事情である。
金融緩和により低金利で融資を受けた信用取引が拡大していたことに加えて、景気対策のために政府が主導する官製の強気相場が続き、「買うから上がる、上がるから買う」という一方的な展開になったことも、個人投資家が主体の上海市場の特徴と考えられる。私たち日本の個人投資家の投資行動にも教訓になる失敗の原因を確認してみよう。
「株価は最終的には業績で決まる」ことは、ゆるぎない原理である。一方で、相場には「勢い」があるので、その流れを捉えることも間違いではない。しかし、ここに落とし穴があって、投資経験の浅い人ほど「上昇相場への期待」がいつの間にか「確信」になって、業績との関連を忘れてしまうことが多い。『株価は本来の価値よりもはるかに大きく変動する』、『どんな人気銘柄も長続きしない。一旦、株価が下落すると回復に何年もかかる』ことを肝に銘じたい。グローバル経済の下では、金融市場の変化が急速かつ激しいので、アベノミクス頼みで期待が先行してきた日本市場にも注意が必要だ。
バブルの発生と崩壊は、共産党一党支配で厳しい規制や統制が可能な中国市場も例外ではないようだ。『強気相場は、絶望の中で生まれ、懐疑の中で育ち、楽観と共に成熟し、熱狂のうちに消滅する』という。しかし、その渦中にいると永遠に上昇相場が続くように思えてしまうが、上がり続ける相場はないのである。株式市場の原理を忘れて、相場の勢いに同調しているだけでは、短期的な市場変動に一喜一憂して、市場が大きく調整した時に狼狽して売り急ぐような失敗を犯してしまう。(『 』はジョン・テンプルトンの言葉)
上海市場の混乱は、程度の差はあれ、過去にバブルが崩壊した東京市場と同根の問題である。中国の投資家の失敗を「他山の石」として、合理的な投資行動を心掛けていきたい。
以上