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- 【最終回】第95回「リーマンショックから9年、ぬるま湯相場の変化に警戒感を」
季節は立秋を迎えた。お盆や夏休みを控えた株式市場は参加者が減って、いつものこの季節の閑散とした雰囲気がある。わが国の株式市場は、2015年の8月の日経平均20,946円を直近の高値にして、2017年8月10日現在も2万円前後で推移している。リーマンショックの最安値から約3倍の史上最高値を更新して来ているNY市場とは対照的な状態だ。
しかし、その株価上昇に勢いがある米国経済や、いまや米国以上に世界中に政治的・経済的影響力を誇る中国経済に変調の兆しが表れ始め、警戒感が必要な時期に差し掛かっているという見解に、謙虚に耳を傾けることも必要ではないだろうか。
米国経済に関しては、来る9月19日、20日の連邦準備制度理事会(FRB)の公開市場委員会で、FRBの資産圧縮開始が決定されるかどうか、に市場関係者の関心が向けられている。FRBの資産は3次に及ぶ量的金融緩和によって、政策前の約0.9兆ドルから約4.5兆ドルに膨張しているので、この資産の圧縮が始まれば、金融緩和と反対の資金の還流が大規模に起きることになる。4.5兆ドルの内、約2兆ドルが米国債や住宅ローン担保証券(MBS)であることから、債券市場や派生商品への影響、史上最高値を9営業日連続で更新した米国株式市場への影響、さらに米国からの投資で支えられた新興国市場への影響が懸念される。もちろん外国人に支えられるわが国の金融市場も真っ先に影響が出ることだろう。
中国市場に関しては、秋に開催される共産党大会で2期目の習近平体制が強大な権力を掌握してスタートする見込みである。それまで経済的混乱を避けるための様々な経済財政政策が、過去2~3年の中国経済の『新常態』を支えてきたといえるのではないか。その陰では、以前から懸念された不動産バブルが地方中核都市にまで拡大し、業績不振の国営企業改革にも進展が見られないまま、金融機関の隠れ不良債権が膨張してきたと報道されている。新指導体制がスタートした後、従来採られた無理な政策の見直しが進む中で、これまでの矛盾した問題が表面化することが十分考えられる。すでに新シルクロード政策である「一帯一路」と、これを資金支援するアジアインフラ投資銀行が起動して、ASEAN諸国から欧州諸国の経済に大きな影響力を持つ中国経済の動向から目を離せない状態だ。
米国は、昨年末のトランプ相場が始まって以来の期待の大きさに対して、政権の政策遂行能力に疑問が生じているが、財務長官や商務長官にウォール街出身者が就任して、政権と金融界の蜜月が微妙な株式相場を支えてきた。一方で、日本市場が現在の水準で停滞が続くのは、アベノミクスに期待したものの、長期的な成長性に懐疑的な投資家が多いことを物語るのだろう。しかし、日米ともに異次元金融緩和に支えられたぬるま湯のような株式市場にも、海外要因で潮目が変わる可能性に健全な警戒感を持つ時期ではないだろうか。
以上