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経済・株式・資産

第94回「観光立国と投資立国の経済効果を比較すれば」

会社と社長のための資産管理講座

  昨年のインバウンド(外国人の国内旅行者)が2,400万人を超えて、アベノミクス開始以来4年間でそれ以前の800万人台から約3倍になった。さらに、5月16日には今年のインバウンドが史上最速で1,000万人に達したと観光庁が発表している。
 
初夏を迎えて観光シーズン真っ盛り。一時ほど円安ではないが外国人観光客が増加し続けることは、円安という追い風の影響だけではなく、観光立国を目指す国策の成果も挙がったことを意味している。これまで日本人が気づかなかったが外国人旅行者には魅力的に映る豊富な観光資源を活用して、インバウンドを呼込むことは、景気刺激と国際収支の改善にもなる重要な施策になってきた。
 
 インバウンド増加を目的にVisit Japanキャンペーンが開始したのは、2003年小泉内閣時代。その後リーマンショックと世界同時不況、東日本大震災と原発事故が起きたが、2013年にインバウンド1000万人超え。2015年に約2,000万人、2016年に2,400万人に到達した。日本は、国内旅行消費額22兆円を創出する観光大国だ。2014年の数字では、旅行消費額22.5兆円、付加価値誘発効果23.7兆円、名目GDPの4.9%に相当し、雇用誘発効果394万人と生産波及効果も47兆円に上る。
 
世界全体では観光業売上高は約6兆ドル、GDPの9%に相当し、2億6,000万人の雇用を創出。この数は被雇用者の12人に1人に匹敵し、自動車産業より大きく金融業界を少し下回る。日本は観光大国になってきたが、その内容には問題がある。訪日外国人旅行は国内旅行消費額22.5兆円のうち2.2兆円、全体の9.8%に過ぎない。これは英国の18.1%や米国の13.8%と較べて低い貢献度なのだ。
 
 一時の中国人旅行者の時計や家電製品の『爆買い』は下火になったが、最近は化粧品や医薬品のまとめ買いが話題になっている。このような経済効果(旅行消費額)はいくら位になるだろうか?旅行者一人当たり20万円の消費があると仮定すると、インバウンド2,500万人で5兆円の経済効果になる(2015年で約3.5兆円)。国内デパート業界の年間売上約9兆円と比べても、大変な影響があることがわかる。
 
 その一方で、わが国の個人金融資産が約1,800兆円にもなるので、その資産運用の経済効果が忘れられてはいないだろうか。1,800兆円の約52%は、利回りがほぼ0%の預貯金になっている。もし、国民の金融経済知識が高まり、堅実な資産運用がなされたと仮定して、1%の利回り向上は18兆円の金融収益の獲得に匹敵する。3%なら54兆円、この金額は1年間の国税収入(今年度は57.7兆円)に相当する。
 
 こうして見れば、過大なリスクを取って7%というようなハイリターンを求めなくても、国内全体で十分な資産運用の経済効果が得られると考えられる。すでにあるNISA(少額非課税投資制度)やiDeCo(個人版確定拠出年金)などを賢く利用して、個人の資産形成が進むことが、観光立国の成果の何倍もの投資立国・金融立国の効果を発揮することになる。こうして得られた金融収益の一部が国内旅行に消費されれば、観光地の益々の景気拡大になるはずだ。
 
                                       以上

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