本年に入り、円がドルにたいして上昇し、東証をはじめとして株価が低下し、中国経済状況の悪化がますます本格化してきています。
リーマンショックよりも強い世界恐慌が来るとおっしゃる評論家もいらっしゃいます。とはいえ、評論家のいう事も当たりませんね。
円高、株安は、昨年末にこんなに変化するとは、評論家は、どなたも予想していませんでしたね。
各社の経営会議に参加してみて、4月以降、本年度の業績を予想していると悲喜こもごもです。
〈円高による影響〉
原材料を輸入にたよる会社は、私の関係する会社は多くあり、本年度の見通しは明るい。過去2年間の実績は振るわなかった会社が多かったです。
一方、海外の輸出に多くをたよっていた運輸、船舶、機械(自動車、建設機械)等は見通しが暗くなっています。
円高になれば、輸入原材料であれ、原価、すなわち原材料が下がり、当然として粗利益高、粗利益率が改善され、損益分岐点売上(収益トントン)が下がり、利益が増大します。飲料食品製造などは、まさにこれですね。
円安になればこの逆ですね。
〈需給バランスによる影響〉
需要が高まれば販売単価が上がり、供給が需要を上回れば単価が下がっていきます。
この業界は、市況産業と言われている資材業界です。石油がそうであり、鉄鋼石、鉄製品業界、建設資材業界がそうなのです。
販売単価が上下することによって、同じ数量を販売していても、売上が拡大したり低下したりで、営業勢力や販売努力では如何ともしがたいものがあります。
利益が出るのは、環境条件によって変化するのであって、環境により利益が出ても企業努力ではないという事です。かといって環境による収益悪化ですと言って、そのせいだけにするわけにはいかないのです。
為替変動による収益の悪化に対しては、商品力があれば値上げをしたり、商品改善、開発による粗利益率改善、通貨変更等の努力である程度の対策はあります。
需要の増大による売り上げの増加には、冷静な判断が必要です。有頂天にならず、もっと!もっと!と拡大主義には気を払うべきなのです。
恐慌への対策は、企業体力を高めることにあります。
資本主義経営システムは、競争を生み出し、製品にしろ、サービスにしろ、年々、質の向上、価格の低下を招き、消費者にとっては歓迎される良きシステムであると私は、信じています(共産主義、社会主義システムは、今や、敗退システムです)。
ただし、資本主義システムの黒影は、貧富の差が企業においても個人においても発生することです。そして、好景気もありますが、大不況時代には考えられないような多くの会社の倒産が発生する事です。景気循環サイクルがあることです。
中小の経営者は、どなたも懸命に不況に耐え、倒れないように自社の経営に必死になって努力されています。セミナーに参加される熱心な経営者は、皆さん 同じ考えに立っておられます。
確かに景気よく高収益を実現すれば、普段の努力が実った結果だと自らの頭を ヨシ!ヨシ!となでる気持ちは理解できます。しかし、常に私は、皆さんの会社の体力度を上げてくださいと申し上げています。
企業体力とは何でしょうか?
企業体力指数=自己資本比率×総資産経常利益率=330以上
と申し上げているのです。
自己資本比率が例えば33%で、総資産経常利益率が10%であれば、330という事です。
すなわち安全性と収益性の掛け合わせです。
「霹靂一声奔雨一過」(へきれきいっせいほんういっか)
(前触れもなく急に雷雨が轟き、勢いのある雨が通り去る)
明治34年刊、今から115年前「商業経済談」に書かれています。
「恐慌は、経済社会の雷雨にたとうべきか、多少の惨害を被ることあるべきも、また、大気を清涼ならしむるものなれば不確実なるものは、これを壊倒し、信用あるものはこれを好栄ならしめ、経済社会の秩序を整理することを得るに至るべし」と。
企業体力があれば企業は残ります。恐慌はすべての企業を倒すことはありません!
リーマンショックの時、多くの中小企業の下請けメーカーが倒れましたが、兵庫のI社、大阪のR社、愛知のT社、東京のM社、九州のS社等々、少なからず影響を受けましたが、今日では業界では以前にも増して収益を獲得されているのです。
ライバル会社が当然、存在していたのですが、消えてなくなって、わが社のシェアが高まった。競争相手の財務力が弱まり、フラフラしている。ともかくも、厳しい冬の洗礼を受けたことにより、強さ弱さがますます明確になってしまうのです。