■佐藤義典(さとうよしのり)氏/ストラテジー&タクティクス代表
「価格は価値で決まり、価値は経営戦略で決まる」と主唱する戦略立案・マーケティングコンサルタント。競合に打ち勝つ経営戦略を獲得する手法を「戦略BASiCS」として体系化。30年以上にわたり中堅・中小企業の戦略づくりを指導。
早稲田大学卒業後、大手通信会社に入社。営業、マーケティング、関連会社のコンサルティングを経て、ペンシルバニア大に留学、MBA取得。帰国後、外資系メーカーのブランド責任者、コンサルティングチームのヘッドを歴任。独立後、中堅・中小企業を中心に戦略立案を指導。著書に「図解 実戦マーケティング戦略」「経営戦略立案シナリオ」の他、弊社刊「経営のすべてを顧客視点で貫く 《社長の最強武器》戦略BASiCS」他多数。講話音声に経営講話 虎の巻シリーズ「経営戦略 虎の巻」「顧客倍増 虎の巻」「営業計画 虎の巻」「販売戦術 虎の巻」CD版・デジタル版全4篇がある。
※本コラムは佐藤義典の経営講話虎の巻シリーズ「価格戦略 虎の巻」発刊にあたりインタビューを編集したものです。
価格を上げる方法はやり方次第で無限大
Q:なぜ、経営にとって「価格」が大事なのでしょうか?
佐藤講師:
それは経営におけるインパクトが大きいからです。利益というのは「売上―費用」です。となると、売上を上げるか、費用を下げるかの二つです。また、売上というのは「客数×客単価」です。客単価というのは基本的には「値段」ということになりますよね。
その時ですが、「コストを10%下げるという努力」と「値段を10%上げるという努力」があります。どちらかというと、値上げを10%するほうが楽だということと、値上げをするインパクトの方が大きいんですね。
例えば100円で売って利益10円の商品。だから利益率10%。こちらの商品を110円で売ったとしましょう。すると利益10円が、価格を10円上げたことによって利益はそのまま20円。利益率18.1%になる。ざっくり2倍になるんですね。
コストを10%下げるよりは、がんばって10%値上げする方がいい。これは3%で考えても同じです。
コストを3%下げるような努力はどの企業もやっているのです。しかし価格を3%上げるというほうは、多くの企業においてコストを3%下げるほどの努力はしていない。コストを削減する方法は減らすしかないのです。しかも「人件費を削る」などの悲しい方向に行きがちです。
価格を上げる方法は、見せ方を変えるとか、比較対象を変えるとか、価値を伝えるとか、やり方次第で無限にあります。このように見ても価格を上げるということのインパクトは非常に大きいのです。
Q:値上げをする場合には何から考えればよろしいでしょうか?
佐藤講師:
これはまさに「価格戦略 虎の巻」の講話のなかで伝えている本質です。
価格は価値で決まります。価値というのは強みと伝え方のかけ算です。すなわち値上げをする場合には価値を考えましょう。お客様にどんな価値を提供できていますか?、それは本当にお客様にとって価値なのでしょうか?その価値を提供している強みとは何でしょうか?その強みを真剣に伝えていますか?ということから考えましょう。
その後は戦略です。顧客は正しいのか、戦場の選択は正しいのか。結局、値上げをする場合には戦略全体を見直すことになるのです。
Q:この講話を聞くと具体的に何が学べますでしょうか?
佐藤講師:
基本的には価格別の戦い方ですが、おそらく聞かれる方は価格を上げたい人が多いと思います。低価格の戦い方というのも話していますけども価格の維持の仕方、それから価格の上げ方というのが中心になります。
そのうえで、うちの商品は価格を上げられないのに、何であの会社の商品は高価格にできているのか。
例えば、マクドナルドのコーヒーは100円です。しかしスターバックスのコーヒーは約350円です。「モノ」としてのコーヒーにはそれほど差はありません。どちらも十分においしいです。ではこの3倍の価格差はなぜ生まれるのか。この答えが講話の中で解説されています。
戦略と価格の関わり合いですね。この戦略だったらどのように価格を上げていけばいいのかというところかと思います。これで価格を上げられる方法を学んでいただき、実践いただければと思います。
Q:この講話を聞かれる経営者にメッセージをお願いします。
佐藤講師:
この講話では価格について取り上げます。価格を決めるというのは非常に難しい事です。なぜなら価格というのは、売り手は一円でも高く売りたい、買い手は一円でも安く買いたい。利害が真正面から衝突する、おそらく経営における唯一という分野、売り手と買い手の意見が真正面から衝突する分野だからです。
価格は色々とテクニック論と言われるかも知れませんが、本質はそこではありません。結局、価格というのは価値の代価です。価値というのは結局は強みとその伝え方です。それから戦場の選択、顧客の選択。すなわち戦略で決まります。
たとえば、ブランドというのは価格を上げる際に極めて重要なことです。ブランドとは何かという事を考えた場合、結局、ブランドいうのもその強みをきちんと伝えているかという戦略の話になるんですね。実はやるべき事をきちんとやる。
これが価格を上げる、維持するという基本的な方法論になります。このやるべき事をきちんとやる。このやるべき事とは何か。きちんとやるとはどういう事か。価格を上げるためには、維持するためにはどうすることかといことをお学びいただければと思います。
価格を1%でも上げられるという意義は非常に大きいです。例えば皆さんの売上を100とし、利益率が5%だったとしましょう。他の事は何もせずに価格を1%でも上げられれば100だった売上は101になります。コストが変わらなかったとしても利益率は6%になります。利益率が5から6に上げれば、ざっくり価格を1%上げただけで利益率が2割上がることになります。
これだけですね、1%の価格のインパクトは大きいのです。おそらく多くの会社が1%のコスト削減というのを血道を上げてやってらっしゃるのではないでしょうか。でも、価格を1%上げる。血道を上げてやっていると自信を持って言える会社はそれほど多くはないんじゃないんでしょうか。
日本の企業は価格を上げることに対して非常に慎重です。だからこそ。ここには多くのチャンスがある。もちろん低価格戦略という戦い方もあります。それも戦略です。
いかにして低価格にして戦っていくか。そのような戦い方もお話します。そしていかにして価格を維持して上げていくか。このような事を講話を聞いて一緒に考えていきましょう。