“世の中には大きなウソが2つある。数字のウソと統計のウソ”
という表現があるが、私はもうひとつ付け加えたい。
それは、“ウソでないウソ”である。
“ウソでないウソ”とは、事実の一部を「正しく」伝えることによって、結果的にウソをついたのと同じことになる場合をいう。
ある会社で、こんな話を聞いた。
本社の人間がたまたま支店を訪問した際、支店長が部下を文字通り怒鳴りつけて怒っているのを 目撃した。
どうやら仕事のミスらしい。
帰って、担当役員に“××支店長は、面前で部下を大声で怒鳴りつけていました”との報告。
これに対して、役員の受ける印象が“××支店長は短気で感情的。
指導力不足。上長として未熟”ということになったとしても、決して不思議ではない。
しかしよく調べてみると、怒鳴られていた部下は、これまで何度も同じミスを繰り返していて、度重なる注意を受けていたとのことである。しかも今回は、事 前に十分な説明と指示を受けていたにもかかわらず犯したミスであった。
もし報告者が、その背景を理解し、これまでの経緯の中での“怒鳴りつけ”を報告していたならば、
「同じ事実」でも、受け取る側の印象・見方は変わったものになっていたはずである。
一見事実らしいものも、その一部だけを切り取ってそのまま伝えると、その部分が事実であるだ けに余計にタチが悪い。
事実ですら、これほどの誤解を生むのである。ましてや「ウワサ」のいい加減さは、いかばかりであろ う。
新 将命