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第231話 インフレ期だからこそ、借入金利について再認識してください

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 インフレ期に入り、銀行借入金利がじわじわと上がりつつあります。デフレ期の超低金利時代とは、まったく異なる経営環境になってきたのです。この環境変化の折に、改めて“金利”についての知識を再確認してほしいのです。

 

1)銀行借入れ金利の相場を知りなさい

 何かの金額を交渉する際、知っておきたいのは交渉事の直近の相場です。今現在、これくらいの数値で動いている、という数字です。相場は変動します。上がったり下がったりするのです。株価、不動産、金など、売買する際には、やはり相場をチェックするはずです。


 銀行借入れ金利も同じです。相場があり、その相場を知ることです。インターネットで検索すれば、すぐに見れます。“日本銀行 平均金利”と検索すればよいのです。すると一番上位に、『貸出約定平均金利:日本銀行』というページが示されます。


 そのページをクリックすると、日本銀行ホームページの、『統計 貸出約定平均金利』のページが表示されます。そのページの最初に『解説』があり、その下に、『公表データ』という項目があります。そこから下は、直近の月単位で銀行貸出金利の平均データのPDFファイルが示されます。


 短期と長期に大きく分かれており、さらに、都市銀行、地方銀行、第二地方銀行、信用金庫と、銀行の種類別に、直近6ケ月の月別平均金利が記されています。このデータは、銀行の銀行である日本銀行が、各銀行から提示させたデータを元に作成されています。これ以上、信憑性の高いデータはないのです。直近の月別の流れでみると、上がったり下がったりしつつ、大きくは金利がじわじわと上がりつつある、という状況です。


 マイナス金利解除後の金利上昇に伴い、金利交渉をする場面が増えています。その際に、直近の相場を知っているか知らないかで、結果は変わってきます。「平均でこの金利なのに、うちに提示してくる金利はどうしてそんなに高いのか?」などと言う根拠になるのです。銀行貸出金利の相場観を得るためにも、日本銀行の平均金利を、月に1回はチェックしてほしいのです。

 

2)タイボ+スプレッドとは何か

 “金利はタイボ+スプレッドで借りなさい。”と言い続けております。改めて、タイボ(TIBOR)とは、Tokyo InterBanking Offered Rate の5つの頭文字からなる名称です。


 銀行は毎日、銀行間でお金の貸し借りを行います。銀行はお金の貸し借りをすることで、手元の現金量を調整しているのです。多すぎず、少なすぎず、にしたいのです。このお金の貸し借りの場を、コール市場といいます。


 1日のうちに膨大な貸し借りが銀行間で行われ、その平均値が算出されます。日々、コール市場でのお金の需給バランスによって、金利が変動するのです。そのため、最も直近の資金需要を反映している金利が、コール市場の金利なのです。


 このコール市場のうち、東京の銀行間で行われている日々の変動金利が、タイボ(TIBOR)です。日本経済新聞の20ページあたりに、毎日掲載されています。東京地区は最も多くのお金が動くコール市場なので、日本の標準金利として、扱われているのです。


 ICOが勧めるのは、タイボ(TIBOR)+スプレッドです。タイボ(TIBOR)は、銀行にすればお金の仕入れ金利です。そして、スプレッドは、“上乗せ”の意味を持ちます。仕入金利であるタイボ(TIBOR)に上乗せする、銀行に取ったら利ザヤとなる金利です。


 お金を借りる側からすれば、このスプレッドをいかに低く抑えるかが大事になってきます。タイボ(TIBOR)は市場の相場金利なので、いじりようがありません。しかし上乗せとなる“スプレッド”は、融資を受ける会社の決算書と銀行交渉力によって、会社ごと、大きな違いがあるのです。このスプレッドが決まるには、会社の決算書が大きく影響します。決算書によって決まるのが、スコアリング(銀行格付け)です。

 

3)スコアリング(銀行格付け)を知りなさい

 銀行は融資先の会社をランク付けします。それが、スコアリング(銀行格付け)です。お金を貸すわけですから、無事に返済できる会社かどうか、見極めているのです。お金を貸しても全く問題のない会社なのか、絶対安心ではないがそう大きな問題のない会社なのか、ちょっと注意が必要な会社なのか、貸せない会社なのか。絶対に貸してはいけない会社なのか、概ね10段階のランクで格付けします。


 そのランク付けのもとになるのが、決算書です。さらに言えば、貸借対照表と損益計算書です。新たな銀行と融資の打合せをするととにかく、「決算書をいただけますでしょうか。」と言われます。あるいは、継続的な融資を受けていても、年度決算が確定する時期には担当者が、「また決算書をいただけますでしょうか。」と言ってきます。


 銀行員が受け取った決算書は、銀行の審査部へと流れます。その審査部で、貸借対照表と損益計算書のデータを入力します。そこには、担当者の見解や意見が入る余地はありません。入力する人物が元データを見て判断し、入力してゆきます。その結果、各種の経営指標が算定されて配点が決まり、配点の合計点で、スコアリング(格付け)が決まります。その結果が、担当者に知らされます。


 このスコアリング(銀行格付け)で知っておいてほしいのは、点数化される経営指標です。経営指標によって、点数のウェイトが異なるのです。その配点表は、別表のとおりです。

 配点表のなかでもウェイトの大きい項目が、「4.返済能力」です。お金を貸す銀行からすれば、返す力が大きいかどうかが一番大切なので、配点ウェイトが大きくなるのは当然なのです。全部で129点のうち、返済能力の配点が55点です。全体の43%です。


 そして注目したいのが、返済能力に示されている3つの経営指標の計算式です。3つ全部に共通するのが、「営業利益」です。「営業利益」は、いわば本業の利益です。銀行は本業の利益がどれだけあるのかを一番重視している、といってもよいのです。であれば、借りる側は、損益計算書の営業利益が最大化されるよう、配慮した決算書にすればよいのです。


 たとえば、雑収入にある家賃収入を売上高で「その他売上高」として計上する。使わない棚卸資産は原価で計上せずに特別損失に「棚卸資産除却損」として計上する。災害による建物等の修繕は一般管理費の修繕費でなく、特別損失に「特別修繕費」として計上する。等々、損益計算書のどこに計上するかによって、営業利益を大きく見せることができるのです。


 そうすれば、スコアリング(銀行格付け)に直結する経営指標の点数が上がるのです。点数が上がれば、格付けも上がるのです。格付けが上がれば、お金を借りる銀行交渉時には、優位に立てるのです。これは、経営者が銀行交渉に必要な知識を持っていなければ、できないことです。知っているか知らないか、実践するかしないかで、稼いで流出するお金が大きく変わるのです。


 インフレ期に入り、金利が上昇するほど、決算書の良し悪しによる借入金利の差も大きくなります。つまり、デフレ期よりもスコアリング(銀行格付け)がますます重要になるのです。格付けが悪い会社の金利と、格付けが良い会社の金利に、大きな差がつく時代となってきたのです。今なお、格付けが良い会社の金利は、先に述べた平均金利よりもずっと低い金利提示を受けています。銀行借入金利についての認識を改めて高めてほしいのです。

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