日本の会社は3月決算が多いですが、
決算まで残り3カ月ちょっととなりました。
私は、この時期になると、今年の決算対策は、どう考えているのか?と顧問先に尋ねるようにしています。読者のみなさまは、いかがお考えですか?
ほとんどの会社は、「まだまだ決算まで3カ月あるし・・・」
などとおっしゃって、のんびりと構えておられます。
ところが、そういう会社にかぎって、決算ギリギリになると、
「あれ、思ったおり利益が出そうだ!このままだと、たくさん税金を払わなければいけなくなる。何か対策を考えよ!」と焦って税務対策を打たれるのです。
焦って期末ギリギリに税務対策をうつと、ろくなことがありません。
期末付近の取引は、税務調査でよくみられるポイントです。
また、対策が小粒にならざるを得ないし、大きな対策を実行したとしても、焦って対策をとれば、どうしてもヌケ・モレが出てきてしまうのです。
私は、いつも「先行管理しなさい」と申し上げています。
子供の夏休みの宿題のように、
休み明けギリギリになって慌てて宿題をするな、
前半で宿題を片付けなさい、と申し上げています。
会社経営でいえば、期の前半で、今年の予算(売上、利益)を確保し、
後半は、来期のための種まきをする(経費を使う)のです。
さて、決算対策の項目を以下に簡単にまとめますので、
わが社で使えるものがないか、検討をしてください。
まず考えるべきなのは、お金の支払を伴わない節税です。
1.売掛金、未収金等で回収不可なら、損金(貸倒)処理する
・相手先別に残高をチェックして、
前期末と当期末の残高が同じものは注意。
・「努力しても回収できない」という証拠集め
を徹底して行うこと(電話、訪問、書面)。
2.売上債権等に対して、「貸倒引当金」を計上する
・債権額の1%程度が損金処理できる (ただし、業種で異なる)。
・回収サイトが長い会社は使いたい
・対象は、未収金、貸付金等も含まれる
3.原材料、仕掛品、製品などで、動きのない在庫は、安く売却する、もしくは、廃棄する
・アイテム別に残高をチェックして、前期末と当期末の残高が同額のものに注意。廃棄が嫌なら子会社への売却を検討する。
4.在庫評価について、低価法の届出を行う
評価損を行わず、帳簿価格から時価まで評価を落とすことができる。
5.特に製品に関して、原価割れでしか売れないのは、評価損として落とす
・季節商品の売れ残り
・新製品発売による型落ち
※破損、型崩れ、棚ざらし、品質変化は対象外
6.貯蔵品(消耗品等)は、損金で落とす
・毎期、同じように使うのであれば許容される
・ただし、期末に一括購入は注意する
(法人税法基本通達 2-2-15 参照)
7.貸付金(特に子会社に対するもの)で回収できないものは貸倒処理する
・支援をしなければ今後より大きな損失を被る
・子会社の倒産回避のため、やむを得ず行うもので、合理的な再建計画に基づく場合
・もしくは、子会社を潰す(特別清算)方法も。
8.業績が悪い子会社株式は、評価損を計上する
1株当たり純資産価額が取得時の50%以下で、近い将来その価額の回復が見込めない場合
9.固定資産台帳を見直し、帳簿にあって、現実にないものは、除却損を計上する
・社歴が古い会社ほど、注意が必要。管理がおざなりの会社だと、そもそも、固定資産台帳の作成が不正確になっている。
10.使わない設備等は、「今後使わない」という意思決定のもとで、”有姿除却”(ゆうしじょきゃく)する
・使用廃止、今後通常の方法で使わない
・金型等で、使用される可能性がとても低い取締役会議事録で、「今後使わない」と決議
11.電話加入権を売却し売却損を計上する
・売却先は、グループ会社または社長個人
・NTT「116」に電話して、”電話加入権譲渡承認請求書”を申請する。
・1本1,500円程度で、譲渡契約書を交わすこと
12.未払給料を計上する(従業員)決算賞与を未払計上する
・例えば、15日締めの場合は、半月分が、未払として計上できる(役員報酬は対象外)。
13.請求締日未到来の未払費用を計上する
(例)リベートの未払い計上
次に、お金の支払を伴った節税、つまり、いかに支払ったお金を経費として落とすか?の話です。
14.30万円未満の備品等は、損金に落とす
「少額減価償却資産」と呼ばれる処理。見積書、請求書を”~一式”とせず、細分化。ただし、年間300万円までが限度。
15.即時償却を行う(R3.3月末まで)
・生産性をあげる投資(A型)
・収益力を向上させる(B型)
・に加えて、新たにC型が設置
C型はコロナ対策として、新たにつくられました。
対象設備は、下記いずれかを実現するもの。
①遠隔操作 ②可視化 ③自動制御化
16.特別償却を行う(R3.3月末まで)
使い勝手がよい特別償却は、
・中小企業投資促進税制
・商業サービス業農林水産業活性化税制
いずれも、取得金額の30%を特別償却として上乗せできる
17.中古資産
中古資産の耐用年数は、下記の通り。
(法定年数-経過年数)+(経過年数×20%)
最も短くて、「2年」となる。定率法を採用して、
期首から使うのであれば、購入金額の全額が損金計上できる。
18.修繕費で落とす
「原状回復、維持管理」に該当すれば修繕費。
見積書、請求書等をそのようにしてもらう。
ただし、全くのでっち上げは当然NG。
19.複数の資産を一括で取得した場合に、耐用年数の短い資産の割合を増やす
・例えば、土地付建物であれば、減価償却ができない土地の割合を減らし、建物を増やす。建物より、耐用年数が短い建物附属設備、機械、備品などの割合を増やすことを考える。
20.新規で取得した固定資産の耐用年数が適切に(短く)設定されているか確認する
・税理士事務所に任せると、耐用年数が長く設定されることがあるため、注意が必要。
ぜひとも決算対策に、お役立てください。