さて、今回は「The プレジデンシャル・イメージ A to Z」のB。
ビジネスシーンの服には必ず付いてるのがボタン。クールビズが始まった時、国会におけるクールビズスタイルで着用可か否かの基準が、ボタンで上から下まで止めるシャツ(ポロシャツのようにかぶって上だけボタンというものではない)。小池百合子さんが沖縄のかりゆしを推奨していましたね。上から下まで全部ボタンが付いているシャツは、伸縮性のない/少ないもの。故に、ピシっとした面と線で構成されることが必須となり、緊張感がある。かぶって着られるシャツのように、伸びきってだらしが無くなることはあり得ないですし、その風の緩い感じが気もちをも緩くさせすぎることもないのです。
このビジネスシーンにおける適度な緊張を保つ為に一役買っている張りのある素材を立体的な人間の体にかぶせ、丁寧に留める役割をしているのがボタン。そしてこれら人間の体の真ん中に、一列に整然と並んでいることが基準とされ、小さいながらも、「その人の価値」という印象を左右する非常に重要なパーツです。
【ボタンを見れば価値が分かる】
どのような服もそうですが、ボタンを見ればその服の価値が丸分かりです。特にビジネスウェアのようにシンプルかつ形の変化が少ない物の場合、ボタンは価値を高める大きな役割を担っています。オーダーメイドで服を作られる場合にもそうですが、ボタンを選ぶのであれば良い物を。それはスーツの前ボタンだけでなく、シャツのボタンにも言えること。薄っぺらな普通の物ではなく、身の厚い良い素材の物にすることで、Vゾーンが作り出す雰囲気に重厚感が出て、社長という価値に合った引き立て方で、顔周りを演出するのです。 女性の服に良くあることですが、ボタン自体が完全に全体のバランスと価値を上げているケース。そのボタンが無くなってしまうと、ただの服ということが多々おこります。ビジネスシーンの服の場合、それほど奇抜であったり、ファッション性の高い物はありません。しかし、シンプルで皆同じような形の物を身につけるからこそ分かる、微妙な差が、それを身につける方の全体的なバランスと雰囲気、イメージを左右することは言わずもがなですね。
【一番上のボタンは留める】
ネクタイを締める時、一番上のボタンは必ず締めるもの。これは必須です。ネクタイを締めるのだから、第一ボタンは閉めなくて良いなどということはありません。ノットが第一ボタンの辺りまで来るからと言って、ワイシャツの襟もとをきちっとした角度をもって作るには、ネクタイだけでは不可能。しかし、この勝手な「大丈夫」という思い込みで、第一ボタンをはずしたままネクタイをしている方が想像以上に多い日本。そして、分かっていてもやっている方もいないわけではない。「だって、苦しいから」と言われてしまうと、何ともまぁ、自分勝手で子供っぽい行動であることよと思います。苦しかったら嵌めなくても良いか?そんなことありません。まずは苦しくないご自分に合ったサイズの襟周りの物を選ぶところに戻って頂くことになります。しかし、適当なサイズであるにも関わらず「苦しい」という方は、どれだけ緊張感の無い毎日をどれだけの期間送ってきたのだろう?と思わされます。このような方ばかりではありませんが、こういう例もあり、本当に悲しい事実です。こうなると、どんなに高価な物を身につけていても価値なし、全て台無し。「だらしない」「締りが無い」人のカテゴリに入れられてしまい、仕事もきっとそういうやり方なんだろうなと思われてしまう。これがイメージの怖さです。その人の価値観が起こす日常的な行動とそれが作る結果である「ボタンを閉めずに・・・」という考え方と行動自体が、その人の全てと受け取られてしまいます。例えば、何か製品を作る時、ぱっと見は大丈夫そうだから、一つくらいパーツがなくても、少しくらいネジがゆるんでいても、ちょっとくらい角がかけていても、いいよね?という意識に通ずると人は判断するのです。ですからどうぞ、見えないかもしれないけれど一番上のボタンまできちんと閉め、その上でネクタイをキリリと締めましょう。格段に印象が引き締まり、ご自身の意識も引き締まります。小さな、小さな一番上のボタンの力は偉大なのです。
【取れかけボタンの情けなさ】
シャツのボタン、ジャケットのボタンが取れかけて、定位置よりも少し垂れ下がったようになっていることありませんか。ボタンは体の中心に縦にまっすぐ並んだ一列である、これは【ボタンを見れば・・・】のところで触れたように、大前提です。しかし、この整然と並んだ物が一つでも定位置からずれたら・・・当たり前のことが侵された印象、イメージにおけるノイズとなります。正式な場面、通常のビジネスシーンではジャケット着用が基本ルールではあります。しかし、こういうケースが起こりえる可能性があることを意識して見て下さい。ご自分が何らかの会議の中心人物となっており、オープンな意見を沢山出してもらいたいと思う時、立場が一番上(その場のホストである場合も)のあなたから「ジャケットを脱いで、オープンに意見を出しましょう」と率先してジャケットを脱ぎ、場の雰囲気を作る責任があります。なのに、そんなときに限ってシャツのボタンが取れかけているなんてことがあったら・・・。これは目も当てられません。「シャツは元来下着であった」ということは、様々なところで語られているのでご存じの方も多いかと思いますが、装いのルールを知った上で、それを崩し、コミュニケーション心理術を上手く使うのも社長の大切な役割。そんなときに、困らないよう、どうぞボタンはいつも定位置にしっかりと。
次回は、今回書ききれなかった「ボタンの語る存在感‐その2」です。