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製造業

第224号 レベル5のモノづくりとは

柿内幸夫─社長のための現場改善

 岡本太郎さんの作品はどれもすごいエネルギーを感じます。いろいろなところで見かけると元気が出ます。 上の作品は渋谷駅、下の逗子海岸にて撮影してまいりました。

kaki224-1.jpg


kaki224-2.jpg さて、昨年に最強のモノづくりレベル4までご説明して中断しておりました。今回はレベル5のお客様への流れのご説明をいたします。まず、レベル0からレベル6までの流れを書き出しておきます。

 レベル0:ダンゴ生産

 レベル1:工程内の流れ

 レベル2:工程間の流れ

 レベル3:工場内の流れ

 レベル4:工場間の流れ

 レベル5:お客様への流れ

 レベル6:一気通貫の流れ

 赤字のところがレベル5です。「レベル5の流れ」とはどんなものか、以下説明していきます。

 これまで勉強してきたのはレベル4までですが、もちろん私たちは流れを追及してきたわけですから、実はすでにお客様につながっています。

 例えば「後工程引き取り」のモノの動かし方をしていれば、一番の後工程はその商品を買って下さったお客様になりますから、お客様への流れは出来ていると言えるのです。

 ただ、レベル5で言う「お客様への流れ」はもっとダイレクトです。例えばスーパーマーケットの食材売り場にパック入りのお寿司を並べたとして、いくらお寿司に人気があっても突然に大雪が降ってお客様が来なければ一つも売れません。当たり前のことを言っていますが、レベル5の「お客様への流れ」の場合はそこに切り込みます。

 そこでレベル5におけるお寿司はと言うと、スーパーマーケットにある、前もって作っておくパック入りのお寿司ではなく、カウンターに座って注文するお寿司になります。

 板前さんに「マグロを下さい」と言ったところ、前日に握っておいたマグロの握りを冷蔵庫から取り出すということはありません。注文を受けてから、前もって短冊の形で用意されていた刺身の材料と、前もって炊いてあったシャリを使ってパッとマグロのお寿司を握って出してくれるでしょう。

 これなら雪が降ろうが何が起きようが、注文がなければ着手しませんから、決して売れずに残ることはありませんね。もちろん材料は残りますが、それは明日以降に使えますから廃却になる心配はないでしょう。これがレベル5のイメージです。

 お寿司屋さんの例は分かり易いと思いますが、もちろん一般の製造業にそのままあてはまる話ではありません。ただ、このような考え方を知った上で一歩一歩お客様からの注文情報に従って作れる仕組みを構築していくのです。それがムダのない経営につながるからです。

 では一般の製造業において、レベル5のモノづくりをしている業界はあるのかというと、私は自動車業界がそうなっていると考えます。

 乗用車は3万点にも及ぶ膨大な量の部品からなる商品ですが、もし新車を買う場合、お客様は基本的には自分が欲しい車種や色やグレードを指定します。決してバックヤードに置いてある何台かの車の中から選ばされるということはありません。

 ディーラーが受けた注文はメーカーに送られます。そして、受注情報を受け取ったメーカーは、そのスペックの車をそのお客様のために一台ずつ生産するのです。

 自動車は一台に3万点もの部品があり、そのうえ車種やスペックを考えると膨大な種類の組み合わせがあるわけですが、日本の自動車メーカーはそれを当たり前のように実行しています。

 最も複雑な構造をした商品である自動車でさえ、レベル5の流れができているということになれば、他の業種のどんな仕事でもレベル5の「お客様への流れ」ができないとは言えなくなりますね。

 ただ、レベル5で流れを意識することは難しいと思われた方も多いかと思います。しかしこの大きな変化の時代に、私たちのモノづくりをどう変えるのかを考えて、流れをここまで変えるという目標を持っていただきたいと思います。

 もちろん、明日から急に全部変えるというのではなく、できるところからこの方向に向かって一歩一歩変えていけばいいのです。頑張って前進しましょう。

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copyright yukichi

※柿内先生に質問のある方は、なんでも結構ですので下記にお寄せください。etsuko@jmca.net 

 

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