東京ビッグサイトで11月9日まで開催中の「Japan Mobility Show 2025」を見に行ってきました。かつての「東京モーターショー」ですね。
人が自由に移動できる状況を保ち、かつ、より便利にするには、従来の自動車やバイク単体では問題解消できないという考えのもと、「モビリティ」全体をテーマに据えて、イベントのあり方を大きく変えたのが2023年でした。社会課題の解決に向けて、自動車に限らないあらゆる業界が手を携え、どのような未来を構築するのかを、「Japan Mobility Show」は目指しているという話です。

そうしたテーマを強く意識している特設展示空間が「Tokyo Future Tour 2035」です。10年後のモビリティがどのような姿になっているのかを示す、いわばメインプログラムという位置づけです。
この特設空間に足を踏み入れてすぐの場所に展示されていたのは、愛知県豊田市のSkyDriveのブースです。実物大の空飛ぶクルマが目に飛び込んできます。
ただ展示されているのではなくて、この先どのように社会実装するかの説明がなされていたのが印象に残りました。今回の展示では、鉄道事業者との連携によって、駅から先の移動を空飛ぶクルマによって円滑に進めるという計画が詳しく記されています。

さらに奥へと進みます。一見するだけでは地味な存在にも思えそうですが、私は一台の自転車の前で足を止めました。
これは水素自転車です。自動車ではなく自転車。トヨタ紡織が開発したもので、いわゆる電動アシスト自転車の一種ですが、同社が開発した超小型の水素発電システムを積んでいます。つまり、立派な燃料電池車であるという話。
燃料電池は1990年代にはもうすでに世界各国で開発競争が進んでいましたが、まだまだ身近な存在とまではなっていませんね。この水素自転車は昨年から福井県敦賀市と協業する形で、走行実証実験も実施されていると聞きます。

燃料電池で発電するには水素の供給が必要です。自転車というちいさな車体でどうやって?
トヨタ紡績の担当者に尋ねたら、水素タンクを自転車に装着する形なのだといいます。どこにタンクがあるのかと思ったら、上の画像をご覧ください。斜めになっているフレームについている、細い水筒状のもの(渋い銀色に光っている筒)が水素タンクだそうです。水素タンクを両足のあいだに挟む格好なのかと、ちょっと不安にも感じますが、同社によると安全性には留意された構造とのことでした。
1990年代後半に、カナダのバンクーバーで当時最新だった燃料電池技術の取材をした経験のある私としては、ここまで進化しているんだ、と嬉しくなりました。

先ほど私は、近未来のモビリティを通して社会課題を解決するには「自動車に限らないあらゆる業界が手を携え」と綴りました。
この「Tokyo Future Tour 2035」では、上の画像にある試作品もまた注目を浴びていました。これ、いわゆるジャンピングシューズです。どこが開発したかというとミズノです。
「MOBILARIA β」と名づけられたコンセプトモデルで、シューズの底面にある板バネが、履く人の跳躍力を高めるというもの。電動などではなく動力はあくまで人です。
これもモビリティ? ミズノは、履物もまたモビリティ、すなわち移動手段のひとつと捉えて、このジャンピングシューズを展示したそうです。ドクター中松さんの発明品を想像しますが、同社担当者もそれを肯定していました。実用化に向けてはさらなるブラッシュアップが必要かもしれませんが、これまた楽しい話であると感じさせます。

「Japan Mobility Show」はもちろん、こうした10年後の近未来を示す展示だけではありません。
数あるメーカーによるブースのなかで私が注目したのは、名古屋市のエイムが開発した小型モビリティ「AIM EVM」です。一昨年も出展していましたが、今回は量産仕様車が並んでいます。税別190万円からで、すでに法人向けには予約受付をスタート、来春には一般ユーザーからも受け付ける予定といいます。
この「AIM EVM」は、離島などでの日常の足を想定している点が興味深いところです。具体的な使用場所を明確に絞っているわけです。実際、開発にあたっては担当者が沖縄の久米島に通い詰めて、どのような部分が大事になるのかを練りに練ったらしい。
台風などに見舞われるとガソリンの供給が途絶えること(だから、この小型モビリティはEV=電気自動車である意味がある)、島によっては坂道が多いケースが目立つため走行性能はとても大事になること(だから登坂能力はきわめて重要なポイントになる)。そうした点を鑑みた仕様としたと聞きました。
各地の過疎化、高齢化といった課題を考えますと、小型モビリティの存在が今後、社会に不可欠になると言われつつも、実際にはなかなか普及は広がっていませんね。こうして、それぞれの地域事情に特化した選択肢が増えていくことは、とても意義があると感じました。
「Japan Mobility Show」の会場をつぶさに見て回ると、日本発のモビリティがどこまで進展し、また今後どのように展開しそうかが理解できます。中堅中小企業やスタートアップの展示からも、「AIM EVM」をはじめ、それぞれの強い意欲を感じることができました。























