インターネットバンキング(IB)の進化と経営への活用についての第2弾。
IBは、銀行の持つ口座情報や取引データ、振込・振替支持機能などへのアクセスを開放する、いわゆる「オープンAPI」を進め、入出金データの照合・消込迅速化、リアルタイムでの残高把握や振込指示などが可能となり、連携したシステムは数多く開発されている。
今回は、これらの機能を活用して営業力の強化につなげている事例について、その活用方法や効果について見ていきたい。
サブスク契約も拡充して販路拡大
ネットワークセキュリティーサービスを展開するA社は、販売代理店を経由した製品販売が中心となっていたが、近年のクラウドサービスやサブスク人気に伴い、サブスクサービスを商品ラインナップに加えて直接契約での販売を始めようと考えた。
しかし、従来は年間保守費用等に関する販売代理店20~30社程度の入金消込・債権管理で済んでいたものが、サブスクサービスでの直接契約を拡大するとなると入金消込だけで数百件に増加する。また、ひとくちにサブスク契約と言っても、毎月払い込む先もあれば半年、1年分をまとめて払い込む先とバラバラで、前受金管理を含めた債権管理がネックとなっていた。
これに対して、IBのオープンAPIを活用した自動消込・債権管理機能を持つシステムを紹介されて導入。人手を増やさずに煩雑な事務を自動化し、販路拡大に結びつけている。
回収状況の見える化により債権管理を強化
入金データの消込迅速化を債権管理強化につなげている企業も多い。
作業服などを製造販売するB社は、月間入金件数が 1,500件程あり、消込作業には2人がかりで毎月50時間以上も掛かっていた。そうなると回収状況の営業への還元は遅れ、営業が未回収先に対して督促を行うのは1週間後以上先となってしまっていた。営業担当者の債権回収に対する意識も上らず、結果として回収サイトの長期化や未回収先の増加が見られた。
このような状況に危機感を持った経営者は、自動消込・債権管理システムを導入して消込迅速化を図り、営業への回収状況の早期見える化を進めた。営業担当者に対するキャッシュフロー経営における回収業務の重要性も説き、督促の迅速化と共に債権管理に対する意識も高めている。結果として消込作業は10時間以下に短縮され、債権回収の精度は高まっている。
リアルタイムでの入金確認によるサービス提供
ネット上でデジタルアプリを提供するC社は、入金確認から顧客にサービス提供するアイドリングタイムの短縮が課題であった。
この課題解決に活用したのは、※バーチャル口座による入金確認サービス。バーチャル口座への入金はリアルタイムで確認できるために入金後直ぐにサービス提供が可能となった。これにより顧客満足向上に効果を発揮している。
※バーチャル口座とは「仮想口座」とも呼ばれ、事業主が法人口座に紐づく振込専用の仮想の口座番号を銀行に申込み、銀行が事業主に貸出しする仕組み。事業主は注文ごとや顧客ごとに仮想口座を割り当てることで、入金データから顧客を特定することができ、同姓同名や家族名義での振込みなどでも正しく入金の内訳管理をリアルタイムで行える。
派遣社員への臨機応変な給与支払い
人材派遣業のD社は、毎月5000人近くの派遣スタッフが稼働しており、週払いや日払いにも対応しているため、毎月1万回以上の給与振込が発生。給与支払い申請の受理から振込までの作業に大変な労力が掛かっていたものを、オープンAPIとの連携システムにより、完全自動化を進めた。
従来は、派遣スタッフがタイムシートをFAXで会社に送り、それを受け取った支払い担当者がインターネットバンキングにログインし、該当する個人の振込先口座を指定して、支払金額を手作業で入力していた。非常に手数がかかるため、振込申請の多い日には担当者が昼食を取る暇もないほど忙しく、大変な思いをして対応していたらしい。
現在は、派遣スタッフが自分のパソコンやスマホから振込申請を行うと、残高以内であれば入力したとおりの金額が自動で振込みされる。深夜でもスマホから支払い手続きをすれば、すぐ翌日に引き出すことができるので、とても便利になったとの評判で派遣登録者の増加にも結びついている。
オープンAPIによるサービスは進化中
このようにIBは、販路拡大や債権回収力強化、顧客満足向上、従業員満足向上など企業の営業力強化にも効果を発揮する活用事例も数多く見られる。これは、銀行によるオープンAPIと連携したAPI連携事業者による新たなサービスが企業の課題解決に役立つものに進化している貢献が大きい。
様々な機能を持つ各種サービスがリリースされているので、自社の課題解決に役立つものを探して活用してみてはいかがだろう。
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