▼牟田太陽の「後継社長の実践経営学」CD版・デジタル版
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- 繁栄への着眼点 牟田太陽
- 第2回 社長は「恐怖」や「不安」にどう打ち勝つか
日本人という民族は、他の民族と比べて不安を抱えやすい民族と言われている。2018年の統計によると、日本人の個人資産の合計は1829兆円になった。年々増え続けている。これは日本という国が災害が多く、「まさかの坂があった時の備え」と一人ひとりが財布の紐を締めているからである。未来への「不安」だ。 そもそも「不安」というものは、漠然とした対象であり、それに対して「恐怖」とは明確な対象への恐れのことを言う。
多くの社長、後継者が将来への「不安」について私の元に相談に来られる。
「父である社長が、全く承継に対してアクションを起こしてくれない」「息子を社長にして社員たちがついてくるのか」「父親が健在なうちは兄弟上手くやれるだろうが、父親が亡くなってしまったら一体どうなってしまうのか」親子関係であったり、兄弟関係であったり様々だ。自社の業界への先行きもあるだろう。
人間とは「不安」を感じる生き物だ。それ自体は悪くことではない。熱いものに触れて熱いと感じないことの方が危険で問題だ。不安になるからこそ、どう対処するのか身につくものである。
誰にでも不安はあるものだ。
私も全国経営者セミナーの登壇など、10年前の私からしてみたら不安と緊張しかなかった。「自分にやれるのか」と葛藤があった。しかし、誰から言われたわけでもなく、自ら2018年1月から自分が壇上に立つと宣言をした。
「不安」「恐怖」というものは、努力と経験でゼロに近いところまでもっていけるようになる。大物歌手だろうが、売れっ子芸人だろうが、年間100回以上講演しているコンサルタントだろうが、ステージ上で多少は心拍数は上がるが、こなしていくうちにそれを抑えていく術が身についてくる。それが場数だ。
会長の牟田 學などは、この話をしたら「俺は緊張などしたことがない」などと、うそぶいていたが、そんなものは人間ではない。 スポーツでもそうだ。皆、「恐怖」「不安」と戦っている。
私もアルペンスキーをやっていたが、スキージャンプだけは理解が出来ない。「恐怖」でしかない。しかし、小さい頃からやっている人たちからしてみたら、空を飛ぶ気持ちよさの方がどこかで恐怖に勝ったのだろう。
ゴルフのトーナメントプロを想像してほしい。優勝候補に絡んでいた選手がミスショットをした。「このままでは勝てない」という不安から背筋を冷たいものが走る。しかし、その不安を引きずっていては優勝は出来ない。そんな時、彼らは前も後ろも考えない。いまこの瞬間に全力を尽くすことだけを考える。これが「前後裁断」だ。 経営もそうだろう。
親子関係であったり、兄弟関係であったり、不安は感じるが何もアクションを起こさないことが問題なのだ。未来に不安を感じる前に、いまこの瞬間に全力でぶつかってほしい。きっと何かが変わるはずだ。未来はまだ何も決まっていない。
※本コラムは2019年3月の繁栄への着眼点を掲載したものです。
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