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人を活かす(10) 若者とともに育つホンダイズム

指導者たる者かくあるべし

 「わが社は世界的視野に立ち、顧客の要請に応えて、性能の優れた、廉価な製品を生産する」

  自動車修理の町工場からはじめて、やがて日本の自動車産業の牽引役となる、本田宗一郎が率いた世界の「ホンダ」の社是である。
 
  1956年1月のホンダ社報に初めて現れた社是には、より具体的な 「我が社の運営方針」が付記されている。
 
  その冒頭に「常に夢と若さを保つこと」とある。
 
  22歳で独立した技術者上がりの稀代の経営者の頭の中には、いくつになっても常に若者の中にある無限の創造力への敬意と憧れが占めていたらしい。
 
  常識的には、若さは「無知」「未熟」の代名詞で、負の評価をともないがちだ。
 
  エジプトのピラミッドの積み石の裏にも「今の若い奴は…」との古代の石工の落書きが残っているというから、この常識から抜け出すのは難しい。
 
  ところが本田宗一郎は、常々「私は今の若い人たちを評価している」と公言してはばからなかった。
 
  創業者世代の自分たちが知っている常識を若いものたちが知らないことをとらえて、バカにしてはいけない、と言う。
 
  「大人というやつは、うんと進歩的にものを考えても、以前はこうだったという観念が根強く残っている」。それが前向き、創造的な仕事の邪魔をする、というのだ。
 
  「としよりは自分たちのやったことをよく反省し、現代に合致しているかどうかを考えたうえでなければ若い人を批判する資格はない」と別な場面でも語っている。
 
   だからといって手放しでの若者礼賛ではない。学校の成績はいいけれど、採用してみると仕事ができない者が意外に多いと本田は嘆く。
 
 そこで、医者に聞いてみると、ものを考えるのは大脳で、学校で成績評価の対象となる記憶力を司るのは親指ほどの部分だと知る。
 
  「親指くらいのものが成熟したか、せんかで、成績がいい、悪いなんて答えを出すのは僭越だね」
 
  本田が求めたのは、ひらめきとアイデアのあふれる大脳が発達した若者なのだが、“その教育は企業採用後にお願いします”と言わんばかりの公教育の惨状がある。本田は言う。
 
  「そこで重要なことは、上のやつがしっかりと人を見ることだな。経営者がボンヤリしてるところで働いたって、しょうがない。能力のある人が働けないからね」
 
  人材鑑定の眼力が今ほど大事な時代はない。
 
 
 ※参考文献
   『俺の考え』本田宗一郎著 新潮文庫
   『本田宗一郎 夢を力に』日経ビジネス人文庫
   『わが友 本田宗一郎』井深大著 ごま書房新社
 
                        
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  著者/宇惠一郎 ueichi@nifty.com 

 

 

 

 

 

 

 

 

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