賃金管理研究所 所長 弥富拓海
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最低賃金は、最低賃金法に基づき国が年ごとに賃金の最低限度を定め、事業場で働くすべての労働者に適用され、雇用形態や呼称に関わらず、最低賃金額以上の賃金を労働者に払う必要があるというものです。今年は全国加重平均で26円の引き上げが答申され、昨年848円だった加重平均額は874円となり、3年連続で政権が目標とする3%の引き上げが確保されました。
今年26円引き上げると、3年間で76円以上最低賃金が上昇する訳ですから、これを1カ月の所定内勤務を168時間として月給換算すれば、3年間で12,768円のベースアップに相当します。「最も単純軽易な作業で、労働時間も変わらない」のに、最低賃金が大幅アップするのですから、パート・アルバイトを抱える企業の現場にとっては無視できない大問題です。
平成30年7月、中央最低賃金審議会が4ランクの引き上げ目安案を示し、8月には、すべての地方最低賃金審議会が昨年より時給を27円~24円引き上げる改定額を答申しました。
●最低賃金を27円引き上げた結果、時給1000円に迫る東京985円と神奈川983円に。大阪は936円となり、時給900円を超えています。
●続く25道府県が時給を27円~26円引き上げた結果、愛知と埼玉が898円、千葉895円、京都882円、兵庫871円、静岡858円、三重846円、広島844円、滋賀839円、北海道835円、栃木826円、岐阜825円、茨城822円、富山と長野821円、福岡814円、奈良811円、山梨810円、群馬809円、岡山807円、石川806円、新潟、福井、和歌山が803円、山口802円となり800円超えとなりした。
●さらに19県が26円~24円引き上げ、宮城798円、香川792円、福島772円、徳島766円、島根、愛媛764円、山形763円、青森、岩手、秋田、鳥取、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、高知そして沖縄が762円、鹿児島が761円となりました。
会社が労働者に地域別最低賃金未満の賃金しか支払っていない場合には、労働者にその差額を支払わなくてはなりません。もしも最低賃金以上の賃金を支払っていないと判断された場合には、最低賃金法に罰則(50万円以下の罰金)が定められています。ご注意ください。
最低賃金を月額として計算する場合は、実際に支払われる給料から残業代、臨時の手当・通勤手当と家族手当を除いて、毎月支払われる賃金が比較対象となります。ちなみに東京の最低時給985円を労働時間168時間で計算すれば、月額165,480円となります。
雇用形態に関わらず最低賃金が上昇し続けるとなれば、月給社員との給料バランスまで崩れてしまいます。そんな深刻なご相談すら受けるようになりました。若年労働者が不足し続ける限り、採用初任給は高騰します。最低賃金の上昇もその全国加重平均額が1,000円に達する年までは続くと考えられます。正規従業員からパート社員まで、それぞれの仕事と処遇のルールを定め、年ごとのベースアップに対応できる「加給制度」を整え、少なくとも高卒初任給が最低賃金を下回ることのないように注意をはらうことが必要となります。