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ナンバー2の心得(17)暴君に仕える

指導者たる者かくあるべし

 信頼されているからこそ、おもねるな

 ウクライナ共産党第一書記だったニキータ・フルシチョフは、1949年の暮れにソ連共産党書記として独裁権力をほしいままにしていたスターリンから、首都モスクワの第一書記に就任するように要請された。

 就任に先立ってフルシチョフはスターリンから、ある匿名の密告文書を手渡されていた。前任のモスクワ党第一書記、ポポフに関するもので、「クレムリンのお膝元のモスクワには、ポポフをはじめスターリンを裏切ろうとする動きがある」と書かれていた。

 その告発に基づいて、スターリンは直ちに更迭を決めたが、その反党策動についてかつての部下で中央政界から距離を置くフルシチョフの評価を聞きたかったのだ。

 当時、古都レニングラードの党組織で反党分子粛清の嵐が吹いていた。その暴風が首都に及ぼうとしていた。

 「君の意見は?」と問うスターリンにフルシチョフは答えた。「あの手紙はヤクザか気違いがでっち上げたに違いありません」

「なんだと!」。告発への支持を期待していたスターリンは気色ばんだ。

 「ポポフだけじゃない。手紙に名を挙げられている者たちを知っているが、そんな男たちじゃない。これは挑発者の仕業です」

 密告と陰謀による粛清が吹き荒れる独裁国家で、独裁者自身が疑心暗鬼に陥る。信頼されているからこその直言だった。

 

 自らに及ぶ危機を覚悟して良心に従う

 スターリンにすり寄り、ご機嫌とりで政敵の反党陰謀をでっち上げ政治的に有利に立とうとしているのが誰なのか、フルシチョフには見当がついた。しかし、「告発は虚言である」との指摘は、刃が自らに向かう危険があった。

 フルシチョフ自身、振り返ってこういう。

 「私は、手紙のでっち上げを支持して、(ポポフらを逮捕させ)スターリンの信頼を獲得したほうがずっと楽だっただろう」

 フルシチョフはポポフをかばっただけでなく、地方の工場長の職をあてがって司直の手から逃した。ポポフは粛清を免れた。

 それを知らぬポポフは、人づてにフルシチョフを口汚く罵ったという。「うまくスターリンに取り入って、私を追放した」と。

 

 権力を握り改革に向かうフルシチョフ

 スターリンの死後、フルシチョフは激しい政治闘争を勝ち抜き党第一書記、首相の地位に就いた。三年後、党大会の壇上に、政治粛清に血道を上げたスターリンの政治的犯罪行為を厳しく非難する彼の姿があった。

 ソ連共産党はフルシチョフの指導の元で、指導者への個人崇拝を禁止し、集団指導体制に移行する。粛清被害者の大半の名誉は回復された。そして訪米を実現し、激化する東西冷戦も暫時、雪解けへ向かうのである。

 

(書き手)宇惠一郎 ueichi@nifty.com

※参考文献
『フルシチョフ回想録』ストローブ・タルボット編 タイムライフ・ブックス

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