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情報を制するものが勝利を手にする(3)
人事の過ちは致命的な弱点となる

指導者たる者かくあるべし

 スペインの無敵艦隊を迎え撃つ英国の女王エリザベスは、秘書長官・ウォールシンガムと海賊の棟梁・ドレークが広く海外にまで張り巡らせた諜報網を通じて、スペインの英国侵攻作戦を時々刻々、細かく把握する。戦力に劣る英国としては、いかに相手の弱点をつくかが勝利のカギとなった。

 集めた情報を総合してエリザベス側近たちは、無敵艦隊の弱点の洗い出しを行う。

 相手の最大の弱点は、艦隊の編成と指揮官の人事にあることがわかった。

 強大な艦隊を抱えているとはいえ、それは地中海沿岸の同盟国による多民族の混成部隊である。言葉も習慣も違う。スペイン国王フェリペに対する忠誠心にも濃淡がある。

 となると、その混成艦隊を束ねる司令官の力量が問われることになる。その人事でフェリペは重大な過ちを犯す。

 無敵艦隊の司令官には、元来、1571年のギリシャ沖のレパント海戦でオスマン帝国海軍を撃破した海軍提督・サンタ・クルス公が就任することになっていたが、艦隊の出撃準備中に急死した。フェリペは急遽、名門貴族出身のメディナ・シドニア公を代役に立てた。

 シドニア公は、陸軍司令官の実績はあったものの、海軍での実戦経験はない。当人も、「船酔いに弱い」など様々な理由を上げて艦隊指揮を固辞したが、フェリペは押し切った。

 たとえて言うなら、総務・企画畑の人間に社運を賭けたプロジェクト営業の指揮をとらせるようなものだ。学歴もあり、社歴も十分とはいえ、畑違いからの天下りの営業部長に、営業の猛者たちを使いこなすことは困難だ。

 フェリペには、「おれが作戦を授けるから大丈夫だ」との思いがあった。実際に出撃にあたって、王は、英国艦隊の戦術と弱点、砲撃の方法について、事細かくシドニア公に指示している。

 「それならあなたが指揮を取ればいい」と思ったかどうか、トップによる細かな現場指示はかえって無責任体制を生む。リーダーシップのタブーである。

 対する英国艦隊。エリザベスは英仏海峡を熟知するドレーク、ホーキンズの海賊船団を公式に王室海軍艦隊に編入する。王室海軍と海賊の奇妙な連合艦隊。その指揮をだれに取らせるか。ここでエリザベスは一計を案じる。

 「総司令官は王室海軍のチャールズ・ハワード海軍卿、ドレークとホーキンズは副司令官としてハワード卿を支えよ」

 挙国一致体制を意気に感じて、海賊たちは王室海軍と指揮を調整しながら、無敵艦隊との戦いで縦横無尽の活躍を展開する。

 人事の妙であった。 (この項、次回に続く)

 (書き手)宇惠一郎 ueichi@nifty.com

参考文献

『アルマダの戦い スペイン無敵艦隊の悲劇』マイケル・ルイス著 幸田礼雅訳 新評論
『世界史をつくった海賊』竹田いさみ著 ちくま新書
『エリザベスⅠ世 大英帝国の幕あけ』青木道彦著 講談社現代新書
『物語スペインの歴史 海洋帝国の黄金時代』岩根圀和著 中公新書

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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