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66軒目 「すすきの寿司対決」

大久保一彦の“流行る”お店の仕組みづくり

 最近、仕事で札幌に行くことが多くなった。
 薄野(すすきの)と言えばラーメンを思い出すが、寿司屋も負けずに多い。同じビルのワンフロアに2件、3件寿司店があってもおかしくない。北海道=寿司というイメージがあるからそうなるかはわからないが、この寿司店の多さには驚くばかりである。
 
 こういう状況だから、お客様の入っている店と入っていない店の差は大きいに違いない。
 今回は薄野の“鮨屋”を二店舗ほど紹介し、この二店舗から寿司屋の繁盛のカラクリを検証してみよう。
 
鮨処有馬
(北海道)

shikumi66_01.jpg
 札幌を定期的に回るようになり、食べログの点数が4点以上の札幌の鮨店を回っている。その中で、コストパフォーマンスが極めて高い店はと言うと『鮨処有馬』を推薦するだろう。
 
 『鮨処有馬』はミシュラン二ツ星の『鮨菜和喜智』、客単価が1万円を切る『ひでたか』に次いで4.10の点数誇る店である。ミシュランでは一ツ星。
 
 まずは、酒のあてから頼むのがいい。例えば8月のとある日は、
 
 一品目 白糠町産の柳蛸の三つの楽しみ
 
shikumi66_02.jpg
 二品目 釧路の帆立、塩と醤油のふたつの楽しみ
 
shikumi66_03.jpg 三品目 積丹のエゾバフンを積丹の鮃で包みました
 
shikumi66_04.jpg
 四品目 毛蟹のほぐし身をイバラガニの内子の塩漬けで和えて
 
shikumi66_05.jpg
 五品目 海鮮スープ 大和芋のふたで蒸して
 
shikumi66_06.jpg
  握り 日本海側のボタンエビ、函館の烏賊 肝醤油で、網走のキチジ 炙り
      根室沖の大助(天然のキングサーモン)、標津の北寄貝
      根室の秋刀魚、松前のシビ 100k弱、夏だけ獲れる噴火湾の穴子 
      鯖、鮗、毛蟹の味噌和え
 
shikumi66_07.jpg
 こんな感じだ。これで、1万円台前半はコストパフォーマンスが抜群だ。
 
 ミシュランの一ツ星なのは、私のようにひとりで利用する人間には関係ないことばかりであるが、立地とトイレが狭く手洗い設備が最低限であることとオーナーひとりで予約を受けているということでサービスがスペシャルでないことが大きいだろうか?
 一つ星がついているので、鮨は極めておいしかったということだろうか?

 
鮨 田なべ
(北海道)
 
shikumi66_08.jpg 札幌に到着してホテルに荷物をおろしたころクライアントさんから「本日は19時終了でお願いします」という連絡が入った。
「夜、時間がとることができるのならば」と食べログを見ながら、人気店に電話をはじめた。
 営業時間を見て昼の営業をしていないことを確認して、次々と電話をする。
 昼過ぎということもあり、ほとんどの店は電話には出ず、4件目くらいでミシュラン北海道の三ツ星に格付けされている『鮨田なべ』につながった。
 三ツ星に格付けされているので遠慮がちに「19時以降であればいつでもいいのですが、ひとりでお席の用意はできますか?」と問いかけた。
 札幌のふつうの寿司店であれば「すいません、満席でございます」という返答がかえってくるのが常だ。案の定「申し訳ございません。満席でございます」と言う返答がかえってきた。
 しかし、この店は違っていた。
「17時30分スタートのお客様がいらっしゃいますので、おそらく19時から20時でお帰りになると思います。本日はその後の予約がございませんので、空き次第ご連絡させていただくのはいかがでしょうか?」
 
 このようなオファーは非常に珍しい。相手のニーズを察してできうることをする、このような対応は“臨機応変”という言葉を超えて、日々心をこめて営業している、一期一会の精神に他ならないだろう。
 さすが“ミシュラン北海道”で4件しかない三ツ星レストラン。すばらしい店であることがこの時点でわかり、わくわくした。
 
 店は真四角の地型のフロアにアーチのように見渡せるカウンターが印象的だ。
 
 ネタの品揃えは北海道の地物と江戸前ものだ。まず、お通しが出て、刺身、焼き物と出て、この後、握りとなる。
 料理はもちろん文句ない。いいものを吟味しているし、握りもすばらしい。
 コースの最後ではデザートを二品出す。この点がミシュランの評価を得た点だったのかもしれない。
 
shikumi66_09.jpg
 しかし、それだけではない。カウンターにはアジア系の観光客が5名くらいで座っていたが、その前で仕事をしている鮨職人は英語を流暢に話していた。
 さらに驚くのは、寿司職人であるオーナーが店に立っていないことだ。
 目の前で相手をしてくれた西崎さんが「ミシュランの審査員がきたときは私が対応しました」と言う。
 その日まで、私は「鮨店はオーナーシェフの店、おやじがいる店でないと評価の高い店になることはない」と思っていた。しかし、その既成概念はあっさり翻った。とてもすばらしい出会いだった。
 
 

鮨処有馬
北海道札幌市中央区南五条西3 ラテンビル 1F
電話 011-552-5503
 
(食べログ内ページ)
 
 

鮨 田なべ
北海道札幌市中央区南五条西3 ニューブルーナイルビル 2F
電話 011-520-2202
 
ホームページ

 

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